2025年NHK大河ドラマ「べらぼう」の第7話(2月16日放送)ネタバレ&あらすじを読みやすい吹き出し形式で記載します!
薄くて安くて充実した内容の吉原細見を作る!
べらぼう7話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:鱗形屋に代わる板元に
蔦屋重三郎は地本問屋の鶴屋を訪れました。
鶴屋は江戸市中の地本問屋の中心的な存在であり、この日も西村屋らの地本問屋が集まり会合が開かれていました。
「鱗形屋、どうなるのかねぇ。わざわざ奉行所が出てくるなんてな」
話題はやはり、小伝馬町の牢屋敷で取り調べを受けている鱗形屋孫兵衛のことに及びます。
なんでも、訴えた大坂の板元が厳しい裁きを望んでるからって話だよ
「厳しい裁き?たかが偽板でか?」
首を傾げる奥村屋に、西村屋が答えます。
それが店には三千近くの摺り終わった本があったんだってさ
同情しているわりには口が滑らかです。
では、鱗形屋さんの代わりに細見を出そうという方はいらっしゃいませんか?
そしてここで鶴屋がこう言うと、いよいよ本題と、西村屋の目が光ります。
ウチ、ウチでやってみたいです!
問屋たちが我先に手を挙げる中、一歩出遅れた西村屋は、バン!と大きく手を打ちました。
私が!僭越ながら、私がやるのが一番よろしいかと!
吉原に出入りし『改』の蔦重も見知っておりますし
噂をすればなんとやら。
会所の者が、蔦屋重三郎という者が来ていると知らせてきました。
どうも、にわかのお邪魔、ご無礼つかまつりの三郎
芝居がかって登場した蔦重を、一同は無言で迎えました。
蔦重は述べます。
今後は、鱗形屋に代わって板元となり、細見を出そうと思っております
まえに仲間内の者しか板元にはなれぬ定めとお伝えしたと存じますが
鶴屋が、おもむろに口を開きます。
ええ、ですから、この際、俺をそのお仲間に加えていただけませんでしょうか。
碓か板元の数を限るのは出す本の増えすぎによる共倒れを防ぐため。
鱗形屋さんはおそらく持ち直すのは難しかろうとお見立てしますし、ならば俺が細見を出し、かつ、このお仲間の末席に加えていただいても差し支えねぇのでは?
蔦重、それは、それはさすがに厚かましいぞ!
西村屋を皮切りに
「吉原の内で招物出すのとはワケが違うんだぞ!」
「主のいない隙に跡を襲おうなんて、お前畜生か!」
と一斉に罵詈雑言が飛んできます。
すると蔦重は宣言します。
俺に任せてくれりゃ、今までの『倍売れる』細見を作ってみせますぜ!そうすりゃ皆さんだって儲かる。こりゃ悪い話じゃねぇでしょう!
吉原細見が大量に売れるのなら、販売する地本問屋たちもその分儲かります。
なるほど。
では、まず見せてもらいましょうか。
『倍売れる』細見とやらを。そのうえでほんとに倍売れれば、仲間内に加わっていただくということでいかがでしょう
鶴屋が穏やかに言います。
蔦重にしてみれば、これも予測していた流れなのです。
そりや俺の細見の売り広めは鱗形屋板と同じく皆様にもしていただける、と、考えてよろしいでしょうか
もちろんです。もつとも、皆様が売りたいと思うような細見ならば、でしょうが…
…分かりました。
では、皆様が『倍売れる』と思うようなものを仕上げてまいります
蔦重は一同に会釈し、悠々と会所を出ていったのでした。
べらぼう7話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:吉原細見を倍売る
蔦重はこの件を吉原の親父たちにも報告しました。
つまりお前の作った細見が倍売れたら、市中の本屋のお仲間に入れてもらえるってえの?
テメェ、また、一言もなく、勝手なことしやがって!
こんな折はまたとないと思ったものですから先走ってしまいました!
俺がお仲間に認められりや、吉原は自前の地本問屋を持てるってことです。
そうなりや人銀で作った本も、それこそ行事の摺物でも、いつでもなんでも市中に売り広めできるようになるってことにございますよ!
これには親父たちも息を呑みます。
そうなれば吉原を売り込み放題万々歳という事です。
蔦重が地本問屋の仲間になれば吉原は自前の地本問屋を持つことになり、行事の摺り物も入銀本も、いつでも江戸市中に売り広められるため、親父たちは大いに喜んだのです。
べらぼう7話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:かをり
宣言通り吉原細見を倍売るために、蔦重は制作の費用を節約して一冊の売り値を半値にし、これまでの倍の数を本屋に仕入れてもらおうと考えました。
さらに、安くするだけでなく
よりよい吉原細見でなくてはならないな!
次郎兵衛と「つるべ蕎麦」の半次郎の手を借りて、男たちがどんな吉原細見を求めているかを調べたところ、大見世の女郎だけでなく、庶民でも揚代が払えるような女郎のことも載せてほしいという声があることに気づきます。
蔦重が考え込みながら歩いていると、いきなり誰かが後ろから抱きついてきます。
「男前はタダってのは?」
年若い女郎が瞳をキラキラさせて蔦重を見上げています。
大文字屋の振袖新造、かをりです。
初見を持ってきた客が男前ならタダにしては?そうすれば男前はこぞって細見を買い、男前の客がどっと増えんしょう?蔦重のような!
ぎゅーっときつく抱きつき、くんくんにおいを嗅いできます。
禿から新造になったばかりのおちゃっぴいで、ヒマさえあれば簡重を追いかけ回しているのです。
考えてくれてありがとな、かをり。
けど、離してくれっか?
一目見た時から分かりんした。蔦重とわっちは前世からの縁!
「何やってんだい!この小童が!ほら離れな!」
仕置き棒をもった、大文字屋の遣り手が、かをりをたたきます。
べらぼう7話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:薄く改良
蔦屋に戻ると、店先で新之助が留四郎と立ち話をしていました。
新さん!今日はうつせみに会いに?
いや。こちらだ。細見を工夫したいって言っておったではないか
前回の細見を見せてきます。
そうでした!何かあります?こうなってればいいというところ!
以前、平賀源内と炭売りをしていた、その小田新之助から蔦重に重要なアドバイスがあるのでした。
もう少し薄くならぬものかと。
この厚さでは、横にしまうとかさばるのだ…
と新之助は実際に細見を懐にしまってみせました。
なるほど懐がもたつき、取り出すにも不便そうです。
頼くなれば収まりが良くなり
これを片手に吉原を歩けるのではないかと
……いける
蔦車の頭の中で想像図が出来上がります。
蔦重はこの言い分が正しいと確信したのです。
新さん!一つお手伝いいただけませんか!うつせみに一度会えるくらいは払いま……
助太刀いたそう!
蔦重が、松葉屋の女郎、うつせみに一度会いに行けるぐらいは金を払うので吉原細見作りに協力してほしいと頼むと、新之助は蔦重にも負けぬ意気込みで、即答で了承したのでした。
新之助はうつせみと「いい仲」なのです。
べらぼう7話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:どんどん改良!
序、全体地図、茶屋や引手茶屋の一覧…
無駄な部分はないか、省けるところはないか、詰められる簡所はないか。
新之助や次郎兵衛たちと相談しながら、どんどん薄くしていきます。
蔦重。女郎屋はどうするのだ?
これ、本当の見世の並びどおりに並べるってできねえですかね…
なるほどな…おい!留四郎!
はいよ!
留四郎がサッとやってきて、手早く女郎屋の頁を実際の並びどおりに並べていきます。
皆の息はぴったりなのでした。
べらぼう7話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:西村屋の提案
そんな折、吉原の親父たちに呼ばれて蔦重が駿河屋に行くと、西村屋と浅草の板元の小泉忠五郎がいました。
聞けば、西村屋も新たな吉原細見を作り、忠五郎がその「改」を務めるのだといいます。
しかし忠五郎は地本問屋の仲間ではありません。
蔦重がそれを指摘すると西村屋が答えました。
蔦重にまともな「細見」が作れるのかって向きも多くてね。
仲間うちから頼まれて、今度に限りこの形が許されることになったのさ
地本問屋の仲間から頼まれて作るというのだから、彼らは皆、西村屋の吉原細見を仕入れることになるでしょう。
西村屋は蔦重に、持ちかけてきます。
忠さんの御見を西村屋さんの後ろ盾で出すってことですか?
そう。
で、忠五郎が「改』に回るのでよろしくと皆様にご挨拶に伺ったわけさ
けど…忠さんは仲間内ではないですよね?
忠さんの細児はウチの本と同じ、浅草界隈だけの将物って扱いでしょう?
だから私と組んで出すって話でね
西村屋がぬけぬけと言います。
蔦重はカッとなって頭に血が上ります。
吉原細見作りは諦めて、
忠五郎とともに自分の「改」を務めてはどうか…?
親父さん…それは!怒
蔦重はこれをきっぱりと拒むのでした。
とにかく倍売れれば、俺はお仲間に入れてもらえるって約束なんで。
俺は倍売って、地本間屋の仲間入りをします!
…そうかい。
では皆さん、あとはよろしく
西村屋は親父たちに会釈をして、忠五郎と共に帰っていきました。
べらぼう7話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:吉原の女郎のために
西村屋たちが去ったあと、駿河屋市右衛門は明かします。
西村屋がきたのは
ただの「ご挨拶」ではあるまい
駿河屋に聞くと案の定、蔦重の細見を買い入れた女郎屋の女郎は『雛形若菜』には使わないと、西村屋は汚いしをかけてきたというのです。
実はな、蔦重…
蔦重の吉原細見を買い入れた女郎屋の女郎は、西村屋の評判の錦絵シリーズ「雛形若菜」に載せないと脅されたのだ…
そうですか。じゃ俺が板元になって、代わりになるもん作ります。
ってことで…!
話聞いてたのかよ!こうなったらもうお前の細見は扱ってもらえねぇ!どのみち倍なんか売れねぇ!お前は板元にはなれねぇってそう言われたんだよ!
だからな…
板元になるのは諦めろ…
それを聞き、蔦重は叫びました。
あいつは吉原のことなんて
これっぽっちも考えてねえんですよ!
たまりかねて重は叫びました。
西村屋のねらいは吉原の入銀だけ。
その金は、女郎たちが体を痛めて稼ぎ出した金です。
女郎の血と涙が滲んだ金を預かるなら、その金で作る絵なら本なら細見なら、女郎に客が群がるようにしてやりてぇじゃねえですか。
そん中からとびきりの客が選べるようにしてやりてぇじゃねえですか。
吉原の女郎はいい女だ、江戸で一番の女だってしてやりてえじゃねぇですか!
胸張らしてやりてえじゃねえですか!
それが女の股で飯食ってる腐れ外道の、忘八のたった一つの心意気なんじゃねえですか!
全身から血が噴き出るような蔦重の言葉だった。親父たちは打たれたように黙り込んでいます。
…….そのためには、よそに任せちゃダメなんです。
吉原大事に動く自前の本屋を持たなきゃいけねぇんです。
今はその、二度とはない折なんです。
だから、どうか、つまんねぇやつに負けねぇで…..共に戦ってください!
蔦重は床に額をこすりつけ、深々と頭を下げたのでした。
べらぼう7話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:共に戦う
へぇ、重三がそんなことをね
見世に戻った松葉屋半左衛門が、蔦重の言葉をいねに話して聞かせました。
あぁ、花魁たちに胸を張らせてやんのが忘八のたった一つの心意気じゃねえかって。
だから共に戦ってくれって、さすがにグッときちまったよ
ただの正義感でないことは、親父たちは皆分かっている。年中吉原を走り回っている高重を、子供の頃からずっと見てきたのでした。
戦うってどういうことだい?
細見を倍売らねぇと、お仲間には入れてもらえねえのさ。
で、そこに西村屋が、敵が現れたってわけでさ
西村屋ってのはずいぶんな老舗だろ?重三に勝ち目はあんのかい?
松葉屋がふと視線を感じて振り向くと、花の井が物言いたげにこちらを見ていました。
……花魁、一つ俺たちも考えてみるかい?
細見を倍売る手立てをさ
へぇ!
めったに感情を見せない花の井が、この時ばかりは嬉しそうに破顔したのでした。
べらぼう7話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:怒濤の日々
…西村屋が出てきたってことは…
倍売るも何も、そもそもこちらの細見は扱ってもらえぬこともあるわけか…
蔦重から話を聞いた次郎兵衛と新之助は、うーんと考え込みます。
地本問屋の親父たちがその関わりを振り切ってもこっちを置いてみたいって考える、決め手が何かありゃいいんですが…
持ち歩きしやすく、半値。
もう十分な気もするが…
新之助はそう言いますが、あとがない蔦重としては確実を期しておきたいところです。
よし、もっとネタを増やしましょう!
こ、これ以上にか?
二人の目がまん丸になります。
実はちょいと気になってたとこではあるんでき。
半値なら細見を買うって連中がいたとして、そいつらが行ける見世ってなぁ、ここに載ってる大見世じゃねぇなって。
こうなりや河岸見世まですべて載せるつもりでやりましょう!
この薄さのままで、すべてを入れ込む。
これには、次郎兵衛もさすがに呆れ果てました。
お前、これ以上に詰め込むなんて。どうやっても無茶だろ…
無茶でも!無茶だからこそ、値打ちがある。
決め手になるってもんじゃねぇですか!
……よし、女郎屋のところから見直すか!
蔦重に根負けした新之助が、ため息一つで動きだします。
それからは怒濤の日々でした。
割り付けのやり直しに苛立つ新之助を吉原名物の巻せんべいや甘露梅でなだめ、怒り狂う彫師には平謝り、見世で鉢合わせした忠五郎に「舐めるな」と言われて動揺し、最後は二文字屋で女郎たちの手を借りて摺ったり折ったり切ったり綴じたり…。
とにもかくにも、蔦重版細見の完成が近づいてきたのでした!
べらぼう7話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:花の井の覚悟
松葉屋と女将のいね、花の井もまた、歴代の細見を山積みにして知恵を絞っていました。
細見というのはさほど変わり映えもせんもんでありんすな…
どう作ろうが、載ってることは同じだからねぇ…
途方に暮れる花の井と松葉屋の横で、いねが何冊かの細見を手にしたたかな笑みを浮かべました。
見切ったざぁす。
細見がバカ売れするのは名跡の襲名が決まった時さ!
花の丼と松葉屋はハッとしました。
自分のまつ毛は見えないものなのです。
有名な名跡の襲名が決まった時の細見ってのは、どれもこれも売れてやしなかったかい?
売れた! 売れてたよ!
あの子、装衣(そめざね)が四代目の瀬川が名跡を継いだ時も!
松葉屋も興奮しています。
花の井は固唾を呑んで、それから意を決したように口を開きました。
…..ならば
べらぼう7話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:花の井改め瀬川
題名は『籬の花』。
籬(まがき)とは、表通りの格子ではなく入り口の脇士間と張見世を仕切る格子のことです。
大見世は大籬(惣離)ですべてが格子になっています。
中見世は半で離の四分の一ほどがあけてあり、小見世は小格子(惣半離)で格子は下半分しかありません。
籬によって格の違いは歴然としていますが、中にいる女郎たちはみな精いっぱい、花を咲かせているのです。
たとえその命が短かろうとも…。
いつもより念入りに拝んでいると、後ろから花の井の声がしました。
蹴散らせそうかい?西村屋の細見は。
これでダメならもう江戸じゅう担いで回るの助だ
いいねぇ。べらぼうだ
花の井はなぜか機嫌よく笑いながら、蔦重に二つ折りの紙片を差し出しました。
ウチで女郎の入れ替えがあったんだよ。悪いけど、直してくんな
え!直してってお前、もう綴じちまって…
困ったことになったと思いつつ紙片を開く。次の瞬間、蔦重はアッと息を呑みます。
お前、これ…
そこには
花の井改め瀬川
とありました。
名跡襲名の時の細見は売れるって言うし、しかも二十年近く空いていた名跡が蘇るんだよ。
直す値打ちはあるんじゃないかい?
けど。
けど、お前。瀬川ってのは不吉の名じゃねえか。
んなもん負っちまってお前
不吉のわけは最後の瀬川が自害しちまったからだけど。まことのとこを改めて聞いてみたら、どうも身請けが嫌で間夫と添い遂げたかった、それだけらしくてさ。
そんな不吉はわっちの性分じゃ起こりようがないことだし。
わっちが豪儀な身請けでも決めて、瀬川をもう一度幸運の名跡にすりゃいいだけの話さ
サバサバと言ってのけます。
蔦重は圧倒されて
・・・・・・男前だなぁ、お前
とそんな言葉しか出てきません。
吉原で生まれ育ち数々の花魁を見てきたが、これほど豪儀に溢れた花魁はいませんでした。
じゃあ、ソレ頼んだよ
お使いでも頼むような気軽さだが、この襲名にどれほどの覚悟がいったか…
べらぼう7話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:花の井の思い
名跡襲名の際には吉原細見がよく売れるのです。
花の井は蔦重の作る細見がよく売れるようにするために、瀬川の名を継ごうと決めたのでした。
花の井!……いつもありがとな
蔦重は感謝の思いを伝えたのでした。
まえにも言ったと思うけど、吉原をなんとかしたいのはあんただけじゃない。だから礼にや及ばねえ、けど…….。任せたぜ、蔦の重三
最後はふざけて、蔦重の下手な褒め言葉どおり男前に決めます。
……おう。任せとけ!
花の井はふっと笑って去っていったのでした。
これで王手を打ってやる!
蔦重は紙片を握りしめて駆けだしました。
べらぼう7話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:西村屋の完敗
地本問屋には、一般的な買い付けのほかに自前の本を交換して仕入れ合う習慣があります。
西村屋と忠五郎の前には新しい細見が並べられ、みな見本を手に取って感心しています。
「これはまた美しい。小川線か?」
奥村屋が紙に手を滑らせます。
小川紙は武蔵国で古くから作られている和紙で、見た目が美しいうえに丈夫なのが特徴なのです。
ふふ。忠五郎のおかげで、まこと良い出来となってさ
「これだけ上品な仕立てなら、贈答の用が増すだろうな」
と村田屋。
吉原の案内目的ではなく、地方からきた観光客が江戸土産に細見を買っていくことも多いのです。
「題もいいですね。新しい細見はこれだ!と、意気込みが伝わります」
その名も『新吉原細見」。
鶴屋にも褒められ、西村屋は得意満面である。
「ところで、あの男は来ないのかね」
奥村屋の言う「あの男」とは、もちろん蔦重のことです。
「尻尾巻いて逃げ出したのかもしれねぇな」
松村屋が小馬鹿にして笑います。
西村屋が
まさか、然様なことは…
と言いつつ嘲笑を浮かべた、その時でした!
遅くなりました!
蔦重が大きな荷を担いで入ってきたのです。
どうもどうも危うく遅まき唐辛子。
なんつって、すぐに支度いたしますので
軽口を叩きながら末席で荷を解いていると、鶴屋がやってきました。
「楽しみにしていたんですよ。倍売れる細見とやらを」
さぁここからが大一番、ひそかに身構えていた蔦重は思いっきり愛想笑いを浮かべたのです。
あ、ありがとうございます!では、どうぞぉ一っ!
着物の懐からスッと細見「離の花』を取り出し、鶴屋に差し出します。
見たこともない薄さに絶句する鶴屋、西村屋たちもあ然としています。
「・・・・・ずいぶんと薄いようですが」
へえ。持ち歩けるように。
細見はそもそも、歩きながら使うものでございますし
地本問屋たちが寄ってきて、品のない仕立てだのなんだのと「離の花』を腐し始めた。
西村屋もとケチをつけます。
「かように薄っぺらな、中も軽薄なんじゃないかい?」
どうでしょう
蔦重はにんまりとします。
中を見て驚きやがれ、べらぼうめ!
鶴屋が本をめくります。
そのとたん、横からのぞいていた奥村屋がすっとんきょうな声をあげました。
「なんじゃ、こりゃ!」
すべての店を入れ込むとこうなりまして
ぎっしりと女郎屋の名前が詰まった各町の地図は、地本問屋全員の度肝を抜きました。
「す、すべて入ってんのかい!これで!」
へえ。河岸の安見世に至るまですべて入れ込みました。女郎屋を睨み合いの形にするなど、見せ方を工夫しましてなんとか収めまして
動揺を見せまいとしているのか、鶴屋は口を結んで本を繰っていきます。
その時、勝手に別の一冊を見ていた松村屋が驚愕して叫んだ。
「瀬川!瀬川って、あの瀬川か?」
待ってました!でも取り立てて騒ぐことではないでせ!
蔦重はさらりと言います。
へぇ、不吉の名跡とされ、もう二度と名乗る者はないと言われてたあの瀬川です。
先日、それでも名跡を継ぐという花魁が出まして、五代目の襲名と相成りました!
西村屋と忠五郎がみるみる青ざめていきます。
決まったのが遅うございましたゆえ、今朝まで直し…。
大変でしたよね。西村屋さん!
……え?
え?まさか、そちらの細見には載っておらぬのですか?
松村屋が
「載ってねぇのか?そっちには」
と西村屋に問い質すような眼差しを向けます。
え!いや、その…
まぁ、仕方中橋。
吉原の外にいる方に応じろというのも難しいでしょう!
ささやかな嫌味に、忠五郎が悔しそうに唇を噛みます。
いくら細見作りが長かろうと、吉原への思いの深さはこっちが上だ!
さぁダメを押してやる。
蔦重は「籬の花」を二冊手に取り、西村屋に差し出して言います。
とっけえてください。その細見一冊と!
一冊と?
へえ。うちは薄っぺらで粗末なもんで、ずいぶん安く作れまして、皆様にも従来の半値で売っていただきたく!
は、半値?
西村屋は腰を抜かさんばかりです。
細を見ていた鶴屋も思わず目を上げ、蔦重を振り返ります。
この細見は巷のありふれた男たちにも買ってもらいてぇと思ってます。
その時に四十八文か二十四文かは大きな違えだ。
四十八文なら見送るけれど、二十四文なら買ってみようって奴は必ずいる。
半値なら、一つ隣の親父の分も買ってやろうという奴もいましょう。
この細見はそこを当て込んでいます。
しかも、これは世に聞こえた名跡・瀬川の名が載る祝儀の細見!
地本問屋たちに向かって言うと、蔦重は鶴屋に視線を移しました。
どうでしょう。俺の細見は。倍売れませんかね?
「売れるかもしれませんね」
鶴屋は気を取り直したようにいつもの穏やかな笑みを浮かべました。
そこに遠目から、「百部くれ!百部!」と大きな声がかかった。
「これ、売れるだろう!必ず!すまねぇな!西村屋さん!」
岩戸屋です。
これを機に西村屋とあまり交流のない地本問屋が一斉に『籬の花』に群がりました。
忙しく本の交換に応じている蔦重を、西村屋と忠五郎は屈辱に震えながら見つめています。
鶴屋もまたその様子を見ていたが、やがてポツリと独りごちました。
「まあ、倍は売れるかもしれませんが………」
べらぼう次回放送
次回のべらぼうネタバレ第8話はこちら
【べらぼう8話】ネタバレとあらすじを吹き出しで解説!2月23日放送(2025年大河)
べらぼうのネタバレとあらすじ:一覧
2025年2月
【べらぼう 2月】あらすじ一覧
第5話 2/2(日) 蔦に唐丸因果の蔓
第6話 2/9(日) 鱗剥がれた「節用集」
第7話 2/16(日)好機到来「籠の花」
第8話 2/23(日) 逆襲の「金々先生」
2025年3月
【べらぼう 3月】あらすじ一覧
第9話 3/2(日) 玉菊燈籠恋の地獄
第10話 3/9(日) 「青楼美人」の見る夢は
第11話 3/16(日) 富本、仁義の馬面
第12話 3/23(日) 俄なる「明月余情」
第13話 3/30(日)わっちの光(仮)
べらぼう7話:筆者の見解
放送後に記載いたします~!
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