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【べらぼう21話】ネタバレとあらすじを吹き出しで解説!6月1日放送(2025年大河)

【べらぼう21話】ネタバレとあらすじを吹き出しで解説!5月25日放送(2025年大河) るるプレス
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2025年NHK大河ドラマ「べらぼう」の第21話(6月1日放送)ネタバレ&あらすじ読みやすい吹き出し形式で記載します!

田沼 意知(意次の息子)

天明の大飢饉の次はわたしが危ない目に……?!

べらぼう全話を吹き出し形式で読みやすくご紹介しています!

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目次

べらぼう21話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:蝦夷

この頃、狂歌のほかに、注目を浴び始めたものがもう一つあった。

田沼 意次

蝦夷?

三浦(田沼の側近)

はい。蝦夷地を幕府の領地、『天領』となさるお考えはないかと!

三浦の突飛な献策は意次と意知を驚かせた。

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蝦夷地というのはザックリ言えば「北海道」である。

田沼 意次

また、なにゆえ急に

三浦(田沼の側近)

実は私、先日、築地の梁山泊と噂されている工藤平期の屋敷を訪ね、そこでこちらが回し読されておりまして

とボロボロの本を出す。

題名は『赤蝦夷風説考』。

赤蝦夷というのはザックリ言えば「ロシア」のことで、要は工平助が著したロシア研究書である。

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工藤はそもそも仙台藩江戸詰の高名な藩医で、藩主・伊達動付に還俗を命じられたのち、さまざまな分野で活躍するようになった人物だ。

その人並外れた見識と社交性に富んだ人柄から、築地の工藤邸には実にさまざまな人々が出入りしており、噂を聞いて興味を持った三浦も出向いてみたのである。

三浦(田沼の側近)

私、その一節を読み驚きまして

酒盛りをしている工藤のところへ行き、三浦は本の一節を示して尋ねた。

三浦(田沼の側近)

あの!このオロシャ(ロシア)の輩が蝦夷地近くの島に城を築いておるというのは、日の本に攻め込む支度をしておるのでしょうか!

あいや!あいやオロシャは交易をしたいだけのようで!確かその先にもそう記したかと

ロシアが我が国と交易をしたがっている。

幕府でも北方問題への関心は高まっており、三浦から工藤の話を聞いた意次は興奮した。

田沼 意次

蝦夷地は確か松前家の領地であったか

すかさず三浦が日本列島北部の大まかな絵図を持ってくる。

三浦(田沼の側近)

工際殿も詳しくは分からぬそうですが、津軽から海を挟んだこの辺りにこぢんまり松前家の城下、隣には蝦夷の民が住むだだっ広い蝦夷地がございますそうで

蝦夷の民とはザックリ言えば「アイヌ」、北海道の先住民族である。

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田沼 意次

そんなに広いのか

三浦(田沼の側近)

それはもう、どれだけ広いか分からぬほど広く、噂によると、そこには数多の金銀銅山が眠っておるそうで

田沼 意次

そう言えば源内もそんなことを言っておったな

今さらながら、平賀源内という稀代の異才を失ったことが悔やまれる。

三浦(田沼の側近)

どうでしょう、殿。ここはひとつ松前より蝦夷地を召し上げ天領とし、長崎のごとく港を開き交易で大儲け、さらに金銀銅山でも大儲けというのは!

三浦が鼻息荒く畳みかける。金銀の詰まった御金蔵が頭に浮かんで意次も勇み立った。

田沼 意次

松本を呼べ!

田沼 意知(意次の息子)

お待ちくだされ!

意知が止めた。

田沼 意知(意次の息子)

父上、上知(領地を召し上げること)をなさるには、理由がいるのではございませぬか

田沼 意次

然様なものはあとからでもどうにでもなる!松本を

田沼 意知(意次の息子)

そうやって急いで上知をした秋田の銅山は、苦情が入り返す羽目になったではないですか

まさしくそのとおり。宝の山につい目がくらんで、勇み足になるところであった。

田沼 意知(意次の息子)

急がば回れとも申します。私が上知の理由に使えそうなものを調べてみますので

三浦(田沼の側近)

しかし奏者番のお勤めも始まったばかりにございましょう

三浦が案じる。

意知の就いた奏者番とは、城中における武家の礼式を管理する役職である。

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田沼 意知(意次の息子)

さほど忙しいお役日でもございませんし。
父上はじっとしていてくださいませ

意知はますます頼もしくなった。

一日も早く幕政の中枢に取り立てねばと意次は心づもりした。

べらぼう21話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:狂歌

こうして蝦夷の話が動きだしたその頃、蔦重もまた、狂歌を広めるべく動きだしていた。

蔦重

狂歌ってなぁ、要するにテメェらの言葉で和歌を詠むってだけのことなんでさ!固く考えねぇで。昔の誰かの歌を捻ってもいいし、「親父』と『ヤジ」を『掛詞』なんかにしてもいいし

昼見世までの空き時間に、女郎や親父たちに狂歌の講義をして回る。

蔦重

まぁ、実のとこ面白けりゃなんだっていいんでさ!

今日は二代目が跡を継いだ大文字屋で、女郎たちが紙と筆を手に、狂歌作りに挑戦している

誰袖

できんした!

真っ先に誰袖が紙を振り上げた。

蔦重

…おう、じゃ誰袖花魁

と少し警戒しつつ促す。

誰袖

狂歌よみ蔦の兄さん儲かればわっちの身請けも近づきんす?

いつものことなので、ほかの女郎たちはニヤニヤしている。

蔦重

そりゃあ歌じゃねぇなぁ

2代目かぼちゃ

誰が袖のからまる蔦や商ひの伸びる葉末に黄金化咲く。どおだい?

顔までそっくりそのまま一代目から受け継いだ二代目大文字屋が、ご機嫌で詠み上げる。

蔦重

お上手ですけど、まず叱らなくていいんですかい?

2代目かぼちゃ

親父の遺言だからねぇ

誰袖は

誰袖

んふ

と蔦重に微笑み、肌身離さず持っている例の証文をひらひらさせるのであった。

蔦重

二代目まで手なづけやがって。あいついってえどんな手使って…

ブツブツ言いながら耕書堂に戻ってくると、歌麿と次郎兵衛が店の前で何やら話している。

次郎兵衛(蔦重の義理の兄)

蔦重。試し摺り上がってきたぜ。『雛形若葉』

蔦重

おおお~。いい仕上がりじゃねぇか

そんな蔦重を見て、次郎兵衛が

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次郎兵衛(蔦重の義理の兄)

お前なんでまた『雛形若菜』作ってんの?

と不思議がる。

蔦重

若菜じゃねぇです。若葉!雛形若『葉』!

次郎兵衛の謎はさらに増したらしい。

「なんでこんなもん作ってんの?」と聞いてくる。

蔦重

そりゃあ、『雛形若菜』に取って代わって、西村屋を吉原から追い出し

と蔦重は歌麿と肩を組み、

蔦重

歌の名を売り、錦絵でも耕書堂の名も上げようって寸法でさ!

とは取らぬ狸の皮算用。三月のある日、蔦重は例によって駿河屋の二階に呼び出された。

べらぼう21話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:親父たちの怒りを買う

丁子屋

まったく売れてねぇらしいじゃねぇか!

丁子屋からバン!と『雛形若葉』を突きつけられる。

蔦重

ねぇ。俺もまさかこんなことになるたぁ

あっけらかんと笑う蔦重に若木屋の怒声が飛ぶ。

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しらばっくれんじゃねぇ!臭ん穴に猪牙舟蹴り込むぞ!べらぼうめ!

松葉屋の親父

とにかく具服屋がおかんむりだよ。もう二度と金出さないって

大尽客を紹介した松葉屋も不機嫌な仏頂面。

蔦重

ありやあ。二番煎じはお呼びでなかったってことなんですかねぇ

開き直りがお家芸になりつつある蔦重の前に、りつがポン、と青本を置く。

女郎屋りつ

これもよく売れてるらしいね

『練が商売物』。

鶴屋から刊行された、北尾政演の自画作である。

続いて

女郎屋りつ

今年の番付で一等をとって

と「融印心日」もポン。

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こちらは大田南畝の草双紙評判記で、「御存商売物」は大上上吉という最高の評価を受け、政演はたちまち時の人になった。

蔦重

毎年一等ってなぁ、欲張りすぎじゃあ

仏の顔も三度撫ずれば腹を立つ。

仏ほど温和でないりつの顔がたちまち夜叉のそれに一変した。

女郎屋りつ

私が言いたいのは政演の大当たりが出んのがなんで鶴屋なんだってことだよ!

松葉屋の親父

え、これ政演だったのかい?

松葉屋が目を制く。

女郎屋りつ

あんた、あんだけべったり抱えといて、あいつが青本書けるって気づかなかったのかい!

弁解の余地もない。「えーと」と言葉を詰まらせている蔦重を見て、大文字屋が一句。

2代目かぼちゃ

飯粒の二つ付きたるへらならんべら棒立ちでなすすべも無し

蔦重

あ!へら棒に飯粒二つでべら棒。いやぁ、お上手!

渡りに船とばかりに飛びつく蔦重。

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その背後で、駿河屋がぬらりと立ち上がった。

駿河屋市右衛門(蔦重の義理の父)

どうしてそういう時にふざけちまうんだよ

べらぼう21話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:花雲助

怪我の手当をしながら、歌麿が蔦重に呆れつつ苦言を呈する。

歌麿(唐丸)

習い性みたいなもんかねぇ

階段を転がり落ちるのも、もはや恒例行事と言ってよい。

北尾 重政(絵師)

蔦重、ちょいといいかい?

振り向くと、北尾重政が政演を連れている。

北尾 重政(絵師)

なんだかこいつが不義理をしたって聞いてさ。おい

北尾 政演

すいません。どうも一等になっちまって

重政が

北尾 重政(絵師)

なんてえ謝り方だよ

と政演の頭を小突く。

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政演は重政の門弟の一人なのだ。

蔦重

謝るこたねぇよ。どこで何書こうがお前の勝手だし。けど、戯作も書けること黙ってるってな、さすがに水臭えんじゃねぇの?

才を見抜けなかった自分の落ち度だが、鶴屋に先を越されたのが悔しくて少しばかりボヤく。

北尾 政演

いや俺、書けるたぁ思ってなかったんですよ。手え出したこたあったけど、さんざんだったし。けど、鶴屋さんの言うとおりやったらなんだかできちまって

ここ足せ、ここにうがちを、ここ省けと鶴屋に言われるまま書いていたら、なんとなくコツが摑めてしまったという。

それを聞いて、重政が納得したように言った。

北尾 重政(絵師)

鶴屋の「指図』がうまいってことかい

蔦重

指図?

蔦重には意外な言葉である。

北尾 政演

へへ。でも絵師の仕事はこちらでやりますんで!これからもお願いします!

蔦重に一礼して、政演はまるで吉原が我が家のようにさっさと大門のほうへ去っていく。

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北尾 重政(絵師)

すまねぇなあ。あいつ、吉原でずいぶん遊ばしてもらってんだろ

実際、政演が家に帰るのは月のうちのほんの数日だ。

蔦重

まあそこはあいつがやたらとモテるってのもありますんで、仕方中橋ってなとこも

苦笑していると、歌麿が二人のほうへ寄ってきた。

歌麿(唐丸)

あの、重政先生。ちょいとお聞きしてぇんですが

そう言って、蔦屋の『雛形若葉』と西村屋の『雛形若菜』を並べて見せる。

蔦重

こんな違うの?色の出

ひと目見た瞬間、蔦重は衝撃を受けた。

西村屋の「雛形若菜』のほうが断然色が美しい。

歌麿(唐丸)

あの、この差ってどっから来んです?絵の具や紙ですか?摺り師の腕?

歌麿が重政に問うと、「一番はこれも「指図』の差かね」という答え。またもや「指図」だ。

北尾 重政(絵師)

絵師と本屋が摺り師にきちんと指図を出せるかどうかで仕上がりはまったく変わっちまうんだ。これがまあ、錦絵の西村屋って言われる所以だね

歌麿(唐丸)

やっぱりすげぇんですね。西村屋って

歌麿がため息をつく。

蔦重

ま、日本橋で何十年も店を張るってなぁ伊達じゃねぇよ

蔦重は侮しくて声も出ない。

してやったと思っていたら、醬螂の冷でしかなかったのである。

渋い顔で「若葉』と「若菜」を見比べていると、「蔦重!」と呼ぶ声がする。

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南畝が大行列を引き連れて五十間道をやってくるではないか。

蔦重

南畝先生?まあ、今日はずいぶんと賑やかな。こりゃなんの会で?

大田 南畝

おう、土山様の花見の会でな

集団の先頭に土山、そして東作の顔も見える。

ほかにも菅江や木網など狂歌仲間が大勢いるが、無関係の人たちもたくさんいるようだ。

大田 南畝

島、上野と花見をしながらきたもんで、いろいろくっついてきてな

年齢も身分もさまざまな、ただ陽気に騒ぐのが好きな人たちが集まってきたらしい。

蔦重は、さりげなく目立っている美形の男に目を留めた。

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なんだか見たことのある顔である。

蔦重

あちらは?

大田 南畝

『花雲助』って言ってたっけねぇ。東作さんの知り合いみてぇよ

視線を感じたのか、花雲助がふっと蔦重を振り向いた。

かすかに微笑んで、また前を向き皆と一緒に大門のほうへ歩いていく。

蔦重

花雲助、どっかで…

それが老中・田沼意次の嫡男だとは、夢にも思わぬ蔦重であった。

べらぼう21話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:誰袖

駿河屋の座敷に芸者や話間が呼ばれ、どんちゃん騒ぎが始まった。

ふじ(蔦重の義理の母)

お待たせいたしました。誰袖花魁が参られました

ふじの案内で、大文字屋の一行が現れた。

2代目かぼちゃ

大文字屋にございます。土山様、毎度ご贔屓にあずかりまして

誰袖

誰袖と申しんす。本日は皆様よろしうお頼みしんす。んふ

心蕩かすような笑みに、男たちは気もそぞろといった風情。

大田 南畝

これは…また、桜の化身のような

南畝も目を奪われたが、東作にこっそり「花魁は土山様の敵婦だよ」と教えられる。

大田 南畝

これはなんと大田何と

と残念がる大田南畝。

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誰袖は男たちの熱い視線を浴びながら土山の隣に座った。

土山(田沼の家臣)

このあいだ、やったアレはどうだ。使うておるか?

誰袖は微笑み、それは豪華な金欄級子の紙入れ(財布)を懐中から取り出した。

誰袖

わすれんとかねて祈りし紙入れのなどさらさらに人の恋しき

狂歌の才能をも開花させた誰袖は紙入れを開け、拗ねたような上目遣いの日を土山に向けた。

誰袖

けんど、紙入れの中がすっからかんで寂しうありんす

土山(田沼の家臣)

ふ。欲深なやつめ

鼻の下の伸びきった土山が、誰袖の紙入れに紙花をガッサリ入れる。

誰袖は内心でニンマリし、ほかの客に視線を移した。

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その中に、群を抜いて美しい顔がある。

誰袖

これは

色白の端正な公達顔は、まるで平敦盛を描いた十六中将の能面のよう。

誰袖が目をつけたのは、男の蔦重も見惚れた美男・花雲助である。

土山(田沼の家臣)

花魁。今日のお題はなんとするかな

土山に声をかけられ、目の正月を味わっていた誰袖はハッと我に返った。

誰袖

では、『袖に寄する恋』、とでも。せっかくですので皆で。ぜひあの辺りのお方もお誘いして!

視線で示した「あの辺りのお方」とは、もちろん花雲助のこと。

大田 南畝

おお!ではまず私から!

誰袖の思惑を知らない南敵が歌を詠み始める。

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よけいなことを…心の中で舌打ちして誰袖がチラチラ眼福を楽しんでいると、酔った男が花雲助に近づき、そつと桜の小枝を渡して言った。

蝦夷の桜にございます

二人で何やらこそこそと話しだす。

何かありそうだーー

ピンと来た誰袖は、遣り手の志げに身振りで盗み聞きするよう指示した。

志げが影のように忍び寄り、二人の会話に聞き耳を立てる。

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蝦夷地を松前より召し上げてくださるのなら、どのような労も厭いませぬ。松前道廣は、あの男は......北辺に巣食う鬼にございます!

桜の小枝の男は声をひそめていたが、その語気は怒りに満ちていた。

べらぼう21話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:悪趣味な楽しみ

鋭い銃声と共に、庭に咲いた桜の花びらが舞い散る。

ここは松前家の江戸屋敷。

諸藩の大名たちが招待され、酒池肉林の花見の会が開かれていた。

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鉄砲を構えているのは松前家当主の松前道廣。

標的は桜の木に括り付けられた武家の妻で、体の際に撃ち込まれた数々の銃痕が、無惨にも白い木肌を露わにしていた。

道廣が、震えながら銃に火薬を詰めている家臣に手を差し出す。

お許しくださいませ!どうか私を妻の代わりに!粗相をしたのは私にございます!

松前 道廣(兄)

なんでもするゆえと、許しを乞うたのはお前ではないか。そのうえまだ俺に望むとは、欲深な夫婦であることよ

家臣から銃を取り上げ、再び銃口をその妻に向ける。

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妻は恐怖の叫び声をあげて気絶し、同時に夫のほうも失神した。

松前 道廣(兄)

ふん。仲の良い夫婦でもあることよ

余興を終えた道廣が、見物していた大名たちのところに戻ってきた。

一橋 治済(家治のいとこ)

見事な腕じゃのう。松前殿

さすが遅れてきた『もののふ』と言われるだけのことはある

意次は見るに忍びなかったが、島津重豪と一橋治済は大いに楽しんだようだ。

屋敷のあちこちには小藩とは思えぬ珍しい舶来の品が垣間見える。

龍の柄の風変わりな服は蠍夷鍋か。

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中国の王朝が貢物をした人々に与える貴重な品だと聞く。

中国と交易している蝦夷の民から入手したものであろう。

一橋 治済(家治のいとこ)

次はそなたもやってみるか

治済が意次に鉄砲を構える真似をしてみせる。

意次は慌てて辞退の意を表明した。

田沼 意次

私は武芸の嗜みが浅うございますのでご勘弁を!的を殺めてしまいます!

松前 道廣(兄)

御心配なさらずとも、的は当家からいくらでもお出ししますゆえ

道廣の悪趣味な冗談に治済と重豪が大笑いする。

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いや、先ほどのことを思えば冗談ではなかろう。

意次は不快な気分を引きずりつつ、松前家の江戸屋敷を出た足で家治に謁見を求めた。

べらぼう21話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:やるべきであろう

十代将軍徳川家治

一橋が外様と仲が良いのは知れたことではないか

田沼 意次

しかし、思った以上に憲と申しますか

主従はしばしばこうして将棋を指しながら政について話し合う。

十代将軍徳川家治

機嫌良く遊んでおる分には良いのではないか?下手に政に口を出すよりは

家治の腕前は奥義を極め、ことに詰将棋は「撰象致格』という図式集を出したほどだ。

田沼 意次

…上様。実は蝦夷地の上知を考えておりまして

家治の手が止まった。

田沼 意次

そこで長崎がごとく港を開き、オロシャとの交易を始めてはいかがかと。加えて蝦夷地では金が取れるという噂もございまして、そちらも合わせて進めれば、幕府の御金蔵を根本から立ち直らせることができるのではないかと

十代将軍徳川家治

その企みを知れば、松前は一橋に頼み、一橋は止めに入るということか?

田沼 意次

一橋様のお考えは掴みきれぬところがありますが、おそらくは

家治の表情に緊りがよぎった。

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急死した家基のことを思い出したに違いない。

田沼 意次

…やはりよしましょう。家斉様が西の丸に入られた今、何が起こるやもしれませぬ

十代将軍徳川家治

やるべきであろう

家治は静かな口調で、しかしきっぱりと言った。

十代将軍徳川家治

どんな者が将軍となろうと揺るぎない幕府を作る、そのために入り用なことであれば

田沼 意次

上様.......

いつの間にか、意次の手は詰んでいた。

べらぼう21話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:そう来たか

翌日、南敵と菅江、木網が耕書堂に顔を出した。

蔦重

昨夜もさんざんお飲みになったんじゃねぇんですかい?

とりあえず酒を出しながら蔦重が言うと、南畝がまだ酔いから醒めぬ顔で

大田 南畝

そうだったっけ

と菅江に聞く。

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そこへ、つるべ蕎麦に使いにやった歌麿が三人分の蕎麦を運んできた。

おおお、蕎麦だー!蕎麦だ蕎麦!

菅江も同じ穴のむじな、手がつけられない。

大田 南畝

み心につゆもたがはず正直におそばを去らず長きよ まで。蔦唐丸

と南畝が蔦重に媚びてくる。

蔦重

んじゃ、先生。うちから狂歌集出してもらえませんか?

大田 南畝

なんで?

蔦重

以前やりたいとおっしゃってたじゃねぇですか

大田 南畝

言ったっけ。…んじゃまぁ、五年後くらいにな

蔦重

えっ!五年後?

大田 南畝

ここんとこ、どこの本屋も狂歌集くれくれってうるさくてな。次の正月には伊八んとこだろ、そのあとは上総屋、伏見屋

蔦重

な、なんでそんな急に一斉に

皆頃合いを見てて、今だ!って思ったんじゃないの?

と木網。

蔦重

俺や、こっちも取り逃したってことですか

蔦重はガックリした。

蔦重

ここんとこ老舗の本屋との力の差を感じてて。俺やちゃんと奉公もしてねぇし、やっぱりいろいろ足りてねぇのかなって

大田 南畝

けど、そこがいいとこじゃないか

南畝が美味そうに蕎麦をすすりながら言う。

大田 南畝

だからこそずっとやってる奴には思いつかねぇもんを出せんじゃないか。細見がせんべえみてえになった時には『そう来たか』って

大田 南畝

俺やあの祭りの本の時に思ったね

「祭りの本」とは、勝川春章が吉原の餓を描いた「卵余情」のことだ。

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俺なんてもっと前からそう思ってたよ

と木網も張り合う。

大田 南畝

そうそう。お前さんにゃ「そう来たか」がお似合い

褒められているのかいないのかよく分からない南畝の言葉だったが、「そう来たか」のおかげで蔦重の頭は疾風怒濤の勢いで回転し始めた。

蔦重

んじゃ、んじゃ、南畝先生、ウチで青本を書いてくだせぇよ

大田 南畝

青本?俺が!

蔦重

狂歌集が出れば、間違いなく来年は四方赤良の年になりまさね。そこに先生が書いた青本をあえてあてる。こりゃ間違いなく『そう来たか!』ってなりません?

大田 南畝

戯作かー

南畝は心惹かれたようである。

蔦重

あ!ついでに、狂歌の指南書なんてお願いできませんかね

指南書?

今度は木網が興味を示す。

蔦重

へえ。狂歌をやりたがる人が増えりや、指南書を求める向きは必ずありまさ!

大田 南畝

はぁ、そう来たかー!

面白そうに笑う南故。

蔦重は久しぶりに確かな手応えを感じた。

べらぼう21話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:歌、あんがと…

歌麿(唐丸)

蔦重。調子戻ってきたんじゃねぇ

歌麿も嬉しそうである。

蔦重

おう!この勢いでちょっくら行ってくら!

丁子屋

もっぺんこれをやる

丁子屋はぽかんとして言った。

りつが見ている『青楼美人合姿鏡』は瀬川落籍の折、蔦重が親父たちに借金して作った豪華な吉原絵本である。

蔦重

違いまさ。これを本じゃなく錦絵でやるんでさ

丁子屋

おんなじことだろ!お前、これでどんだけしくじったか忘れたのかよ!

松葉屋の親父

鳥か。お前は

松葉屋も呆れている。

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その横で駿河屋がぬらりと立ち上がった。

追ってくる駿河屋から逃げつつ、蔦重は別に持参した鳥居清長の錦絵を皆に見せつけた。

蔦重

確かにあん時やうまくいきませんでしたけど、今なら当たると思うんでさ。今、清長がウケてる理由の一つは、景色の中の美人を描くからなんですから!

大文字屋が

2代目かぼちゃ

確かに言われてみりゃそうだねぇ

と納得する。

蔦重

でしょう!今、吉原の景色の中で女郎を描けば大当たり間違いなしでさ!次の女郎絵はこの趣向でどうです?

女郎屋りつ

やるとしたら絵師は誰でいくんだい?

りつも少し心が動いた様子。

蔦重

.....誰でって、そんなの決まってるじゃねぇですか!

張りきって出かけていった蔦重は、やけにどんよりした顔で耕書堂に戻ってきた。

歌麿(唐丸)

蔦重!ちょいと!これ!西村屋のみてえだろ!

歌麿が興奮気味に新しく摺った『雛形若葉』を見せる。

素晴らしい色彩で、元の「雛形若葉」とはまるで別物、似て非なる仕上がりである。

蔦重

…お!おお!ホントだな

歌麿(唐丸)

指図を入れりゃこうなんだって!重政先生と七兵衛さんが教えてくれてよ

重政がわざわざ七兵衛という摺り師を連れてきて、指示を出しながら摺ってもらったらしい。

蔦重

あ、そりゃどうも

うわの空で礼を言うと、重政が

北尾 重政(絵師)

何かあったのか?

と怪訝そうに聞いてきた。

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蔦重は言いにくそうに口をつぐんでいたが、突然、歌暦にガバッと頭を下げた。

蔦重

歌。すまねぇ!此度は外れてくれ!女郎の錦絵、歌麿じゃ金は出せねぇって言うんだよ。錦絵は仕上がりも大事だけど、やっぱり絵師の名が物言うんじゃねぇかって

歌麿(唐丸)

あ、あ、そうなのか。んじゃ、絵は誰に?重政先生?

蔦重

政演でいこうかと思ってる

重政がエッという顔になる。

歌麿(唐丸)

政演って。あいつ、錦絵やったことないぜ!

蔦重

けど、『岡日八日』の画工の部では清長に次いで二番目に入ってるし、なんせ『御存商売物』の作者だし。鶴屋があいつを作者として売り出すなら、こっちはあくまで絵師として売り出せ、ぶつけろってな話の流れになって

歌麿(唐丸)

あ~。そりや「そう来たか」ってなるもんな

と歌麿。

蔦重

すまねぇ歌!ここまでさんざやってもらって!

歌麿(唐丸)

蔦重。顔上げとくれよ。そんな大仕事まかすってなったら、政演さんに今まで頼んでたもんできなくなんじゃねぇ?俺それやるよ

蔦重

あんがとな。歌。あんがと…

ホロリと涙ぐんでしまう蔦重であった。

べらぼう21話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:蔦屋史上とびきりの「そう来たか」

蔦重

今日はお忙しいのにわざわぎ。ホントにもう、先生にや頭上がんねぇや

茶屋や小料理屋が賑わう夕暮れ。

蔦重は、重政と七兵衛を見送るため五十間道を歩いていた。

北尾 重政(絵師)

世話焼きは俺の性分だからよ。それよりやるんなら政演、よろしく頼むよ。......と、言いつつ、俺や歌にやってほしかったけどね

蔦重

…え!そりゃまたなんでです?

北尾 重政(絵師)

俺や駆け出しの奴の絵は山ほど見つけど、そいつらが落ち着く先の画風もだいたいは読めんだよ。けど、歌はからきし読めねぇんだよな。そうなると見たくなんじゃない。あいつが人真似をやめたらどういう絵を描くのかって

見返り柳で二人を見送り、蔦重は思案しながら耕書堂に戻ってきた。

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歌麿は重政に教えてもらった指図の出し方をせっせと紙に書き起こしている。

蔦重

歌。これから、お前の名どんどん売ろう

歌麿(唐丸)

へ?

蔦重の神妙な顔に歌麿は面食らっているが、重政の話を聞いて蔦重は肚を決めた。

蔦重

絵は今のまま人真似でいい。人真似上手の歌麿でお前の名を売んだ。したらよ、そのうち世間は思うわけさ「こいつホントはどんな絵を描きやがんだって」。そこに、どーんとぶつけんだよ。お前ならではの、とんでもねぇ画風の絵をよ

歌麿(唐丸)

蔦重、絵のことなら俺ホントに気にしてないから。俺はさ、実のとこ、名が上がるとかホントにどーでもいいんだよ。屋根があって、飯食えて、絵描いて暮らせりゃもう十分…

蔦重

俺がそうしてえの!

蔦重が強引に話を遮り、歌麿の両肩をがしっと掴む。

蔦重

お前は蔦屋史上とびきりの『そう来たか』になんの。俺がそうしてえの!

歌麿(唐丸)

…まあ、蔦重がそう言ってくれんなら

蔦重の迫力にたじたじとなりつつ、歌麿は答えたのであった。

べらぼう21話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:抜荷

一方、意次も蝦夷の一件に本腰を入れて動きだそうとしていた。

田沼 意知(意次の息子)

では、上様は上知を進めよと

田沼 意次

ありがたくもそう仰せくださってな……。で、お前のほうはどうなっておる

意知は源内の片腕だった東作から、蝦夷通の旗本・土山宗次郎を紹介された。

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その土山の仲立ちにより、花雲助と名乗って密かに『湊源左衛門」という男と接触したことを報告する。

田沼 意知(意次の息子)

故あって松前家を追われた、勘定奉行をしておった者にございます

花の会で「蝦夷の桜にございます」と意知に枝を差し出した、あの男だ。

田沼 意次

元勘定奉行とは、さぞ松前の事情には詳しかろうな

田沼 意知(意次の息子)

はい。その者によりますと、松前の当主道廣は北辺の地を良いことに、やりたい放題のようです。家中を恐怖にて従わせ、蝦夷の民にはひどい仕打ちを行い、とどめにはあろうことか「振荷」も行っておるそうにございます

三浦(田沼の側近)

ぬ、抜荷?

三浦が腰を抜かしそうになる。

それもそのはず、抜荷とは密貿易のことで、この時代は基本的には「鎖国」。抜荷は言うまでもなく法度である。

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が、意次はある程度予想していたことであった。

田沼 意知(意次の息子)

松前はオロシャとの『抜荷』で莫大な利を得ておるようで、これを理由に上知を命じるというのはいかがでしょう

と意知が具申する。

田沼 意次

俺も確かめてみたのだが。蝦夷の民は古よりの慣わしとしてオロシャとの交易を許されており、松前は蝦夷の民との交易は許されておる。その者らとの交易で得たものだ、などという言い逃れを許さぬような確かな証は得られるか?

三浦(田沼の側近)

たかが一万石の松前に、そこまで確かな証が入り用にございますか?

いぶかる三浦に、意次はそこまでしなければならない根拠を明かした。

田沼 意次

松前は思った以上に白天狗と懇であるようなのだ

三浦(田沼の側近)

白天狗…一橋様ですか?お待ちください!一橋様ということは…

三浦も意知も、それがどういうことなのか分かったようだ。

田沼 意次

上様はそれもお覚悟の上、『やれ』と仰せになってくださったということだ

二人は無言のまま、その言葉を重く受け止めた。

田沼 意次

この件、しくじりは決して許されぬ。しかし、晴れて上知をなすためには、白天狗、松前に気づかれぬように事を進め、その鼻面に抜荷の確かな証を突きつける筋しかないのだ

田沼 意知(意次の息子)

…抜荷の取引の場を記した絵図、というのは確かな証となりませんか?

意知が聞いた話では、湊がまだ松前にいた頃、「出回るとまずい絵図」をほうぼう探し回ったことがあったという。

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行方知れずのまま終わったようだが、それほど必死であったのは、それが抜荷の確証となってしまうからにほかならない。

田沼 意知(意次の息子)

よし。じゃあ、お前はここまでだ。以後この件には関わるな

相手は白天狗だ。大事な息子を危険に晒したくない親心が、意次にそう言わせた。

田沼 意知(意次の息子)

父上が関わるなら、私が動こうが動くまいが同じことかと

それはそうなのだが…、揺れる意次に、意知は笑って言った。

田沼 意知(意次の息子)

ご案じなく、うまくやりますよ

べらぼう21話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:誰袖が欲しいもの

意知は土山を屋敷に呼んで、絵図の行方を突き止めるよう命じた。

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土山(田沼の家臣)

かしこまりました。絵図は東作に探らせてみましょう。それからこちらを。誰袖花魁からの文にございます。私が預かりましたが、花雲助様宛てのようで

渡された文を開くと、

『是非折り入ってお話ししたきことが。蝦夷の桜につきんして』

とある。

花の会の折、湊源左衛門と交わした会話を盗み聞きしていたらしい。

田沼 意知(意次の息子)

この者、松前と繋がっておるということは考えられるか?

土山(田沼の家臣)

それはないとは思いますが、アレは強か者。事情を嗅ぎつければ強請ってくるかもしれませぬ

面倒だが放置するわけにもいかず、意知はその夜、誰袖を指名して大文字屋に上がった。

田沼 意知(意次の息子)

文を読んだぞ。話とはなんだ?

腹が読めないので、素知らぬ顔で探りを入れる。

誰袖

んふ。吉原には松前のご家中、蝦夷地の物産を取り扱う商人などさまざまなお方が出入りいたしんす。小耳に挟んだお話では、どうも抜荷の証などを探しておられるご様子。わっちはお力になれるのではと思い立ちんしてなぁ

田沼 意知(意次の息子)

なるほど。間者の褒美に金が欲しいということか

誰袖

金よりもっと欲しいものがありんす

誰袖は、意知の端正な顔を大きな瞳に映して言った。

誰袖

花雲助様。わっちを身請けしておくんなんし

意知は戸惑った。

まさか身請けを取引に持ち出してくるとは思わない。

誰袖

主さんを一日お見かけし、すぐに分かりんした。主さんは仏様がわっちのためにお遣わしになったお方と

田沼 意知(意次の息子)

…気持ちは嬉しいが、あいにく身請けできる金などなくてな

誰袖

やつしてみせたところで羽織の裏の網、小補にたき染められた香。何より主さんが今日ここに来るのを土山様が許したのは、主さんが土山様より上のお方ということ

なかなか知恵が回るようだが、女子を引き込むのは性分に合わない。

長居は無用と立ち上がる。

田沼 意知(意次の息子)

よしておけ、女だてらに間者など。しくじればどうなるやもしれぬ危ない役目だ

誰袖

わっちは松前に関わるお方に、あの日聞いたことをお知らせすることもできるのでありんすよ

田沼 意知(意次の息子)

座敷で見聞きしたものを漏らすなど、花魁は吉原の格を落とすような振る舞いをする女なのか?

にこやかに言い置いて去っていく意知を、誰袖は唇を噛んで見送るしかなかった。

べらぼう21話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:工藤の冷や汗

少し時を置いて若葉の頃、意知は土山の屋敷を訪ねた。

土山が湊に改めて確かめたところ、例の絵図が漏れ出て騒ぎになったのは上方で、その件を含め、東作に上方を探らせているという。

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蝦夷と取引をしている商人は近江の者が多いので、絵図と共に松前の抜荷を訴え出てくれる者も探すそうだ。

吉原での豪遊ぶりからも分かるが、なかなかに抜け目のない男である。

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その一方、意知は三浦に手筈してもらい、工藤平助を屋敷に呼び出した。

田沼様直々にお呼び出しとは!本日はいったいいかな御用で!

工藤は緊張を通り越して戦々恐々である。

田沼 意知(意次の息子)

松前を追われた湊という者を知っておるな

工藤がハッと顔色を変えた。

すかさず意知が

田沼 意知(意次の息子)

そなたのコレにも力を貸したそうだな

と三浦が持ち帰った『赤蝦夷風説考』を出す。

こちらはあくまで内々で楽しむためのもので!

田沼 意知(意次の息子)

責めるつもりはない。そなた、ひいては伊達家は、湊の訴えに対しいかなる考えを持っておる。本音のところを包まず聞かせてもらいたい

言い逃れは許さぬとばかりに見据えられ、工藤の背中に冷や汗が流れた。

べらぼう21話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:恋川春町、これにて御免

上野のお山は見事な錦秋模様、蔦重はとある料理茶屋で、のちに「うた磨大明神の会」と呼ばれる会を開催した。

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戯作者や絵師、狂歌師、もしくはそれを志すなら誰でもどうぞという宴会で、目的は歌麿の名を売るためであり、もう一つ、狂歌集を出すという目論見もあった。

蔦重

名のあるお方らに仲良くなってもらって狂歌の会をやってもらえりや、そこで歌拾って一冊作れるじゃねぇですか!

智恵内子に企画を話していた蔦重は、ふとかたわらを見た。今日の主役である歌麿がいない。

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キョロキョロすると、少し離れたところで燕十と、誰だか分からない酔っ払いと三人で話し込んでいる。

これじゃいつもと変わらないではないか。

蔦重

お前の顔売る会なんだよ。ほら、あっち行って知らねぇ人と話してこい

ったく世話の焼ける。と、そこへ喜三二が困った様子でやってきた。

朋誠堂 喜三二 (平沢)

蔦重、ちょいと春町と話してくんないか?

見れば春町は一人手酌で飲んでいる。

すでに目が据わっていて、そこだけ湿っぽい空気が重くよどんでいるようである。

蔦重

春町先生。何かご不幸でもあったんですか?

蔦重は気の毒そうに言った。

朋誠堂 喜三二 (平沢)

どうも政演のことが引っかかってんじゃねぇかと思うんだよ。今年の一番をとったの政演の『無』、ありゃ春町の「蒸戦』を下敷きに使ってんだろ。あいつ、テメェの種で相撲取られた気がしてんじゃねぇかって

蔦重

そんなことに気にする人います?お互い様も様様じゃねぇですか

その時、政演の陽気な声が聞こえてきた。

北尾 政演

んじゃ、狂名、身軽折助ってなどうですかね!

大田 南畝

良いのではないか。あっちこっち節操なく出入りしそうで

南畝も楽しそうに笑っている。

そんな二人を見ている春町は、ジトッとした恨み顔だ。

蔦重

こいつあいけねぇ

蔦重は慌てて喜三二と春町のご機嫌取りに向かった。

蔦重

春町先生、お待たせ山~

恋川 春町

俺にかまわずとも。かまったほうがよい相手が大勢いるであろう

イジけたようにまた手酌で酒を飲む。

蔦重は春町の徳利を奪っておちょこに酒を注ぎつつ、

蔦重

何をおっしゃいます。うちの大看板をほっとけるわけねぇでしょう!

とヨイショする。

そこに

大田 南畝

へぇ!蔦重んとこで女絵やんの!今度!

と折悪しく南畝の声。

蔦重

そうなんですよ。なんだか見込まれて、やることになっちゃって!

恋川 春町

…あいつ錦絵描くのか

ますます暗い沼に沈んでいく春町。

朋誠堂 喜三二 (平沢)

まぁあいつ女好きだからな!

などと喜三二と二人して必死にごまかしていると、またまた南畝の声。

大田 南畝

『御存商売物」も絵もよく出来てたもんなぁ!『辞闘戦』と似ているが、地口の化け物という趣向を捨てることで、グッとしまったのだな

またよけいなことを!

おまけに春章まで政演の絵の描き入れの細かさをめたものだから、政演は重政に「つけあがんなよ」とたしなめられる有頂天ぶり。

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蔦重が恐る恐る春町に目を戻すと、自棄になったように酒をあおっている。

蔦重

けど、俺やあの地口の化け物好きですよ

蔦重の慰めも効果はなく、喜三二が

朋誠堂 喜三二 (平沢)

もう帰ろうか。な

と春町を優しく促した。

そこに三度、南畝の声。

大田 南畝

下手くそー!戯作はいけても狂歌はダメだなー!

狂歌を詠んだらしい政演が、皆から「下手くそー!」と一斉に野次を飛ばされている。

北尾 政演

なんだよ、下手下手言いやがって

政演がブツブツ言いながらやってきて、春町の両肩にポンと手を置いた。

北尾 政演

んじゃ次!春町先生!ひとつ、戯作者も狂歌詠めんだって目に物見せてやってくだせえよ

馴れ馴れしく肩を揉む。

泡を食ったのは蔦重と喜三二だ。火に油を注ぐ気か!

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蔦重

政演!先生、出来上がってっから!

朋誠堂 喜三二 (平沢)

帰ろ!蔦重!俺たちお先に

そんな二人を尻目に、春町は

恋川 春町

いや、詠む

と立ち上がった。

そう来なくちゃと政演は大喜びだ。

恋川 春町

今日出んとー

政演が「お!」と嬉しそうに自分を指差す。

政演は『御存商売物』で京伝を名乗っていた。

恋川 春町

女にモテぬと焦りける1人のちょいと拝借!調子に乗ってんじゃねぇよ。テメエはただの盗人だろが!

唸るように怒鳴ったかと思うと、春町はそばにあった膳を蹴飛ばした。

恋川 春町

四方の赤ー!酔った目利きが品定め岡目八日囲碁に謝れー!

恋川 春町

気散じと! 名乗らばまずは根詰めろ詰めるも散らすも吉原の闇

南畝、喜三二を次々腐しながら、そこここの膳を蹴飛ばしていく。

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賑やかだった宴席の場は緊迫した空気になり、春町を外に連れ出そうとした蔦重は勢いよく払いのけられ転倒する始末である。

恋川 春町

朝から晩までふざけやがって!テメェらなぁ!テメェら、テメえらなんかなぁ!

緊張がみなぎったその時し。

思いっきり場違いな放屁音が放たれた。

次郎兵衛(蔦重の義理の兄)

......へへ。すいません

犯人は次郎兵衛である。

それは真面目が苦手な者たちにとって救いの手、いや救いの屁であった。

大田 南畝

お…俺たちは屁だあああああ!それ、へ、へ、へ、へ

南敵が音頭を取るや、一同申し合わせたように

「へ!」「へ!」「へ!」「へ!」

と手拍子を始めた。

大田 南畝

へ心くへをこき井手の山のみの一つだに出ぬぞきよけれ、はい!へ!へ!へ!!

まずは南畝が墓の中で兼明親玉がひっくり返るような換骨奮をやらかし、二番手の菅江が踊りながら屁の歌を詠むと、再びおふざけ態勢に入った一同は一気に盛り上がった。

蔦重

.......あの、春町先生

心配そうな蔦重をよそに、すべてが虚しくなってしまった春町は、矢立の筆をばきりと折って宣言した。

恋川 春町

恋川春町、これにて御免!

べらぼう次回放送

次回のべらぼうネタバレ第22話はこちら

第20話 | 第22話

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べらぼうのネタバレとあらすじ:一覧

2025年5月

2025年6月

べらぼう21話:筆者の見解

見返りさん

放送後に記載いたします~!

大河ドラマ べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~ 蔦屋重三郎とその時代 (TJMOOK) [ 鈴木 俊幸 ]

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