2025年NHK大河ドラマ「べらぼう」の第33話(8月31日放送)ネタバレ&あらすじを読みやすい吹き出し形式で記載します!

うぅ…俺の仲間たちが…
べらぼう全話を吹き出し形式で読みやすくご紹介しています!

べらぼう33話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:打ちこわし
天明七(一七八七)年五月二十日。
市中のとある辻に、端正な黒間の職が立てられた。
関八州の民を苦しめているお上と米問屋の罪を正すべく、我らは打ちこわしを行うに至った。お上ならば、人々の暮らしを成り立たせる政をせよ
ー新之助が幟に綴った言葉に、蔦重はしばし思いを巡らせた。

…さてと
そして蔦重もまた、心を決めて駆けだした。

お前らは離路で役人と手を組み、米を買い占め売り惜しみ、己が身ばかりを肥え太らせた!これは世を救うための行いである!
幟をはためかせた新之助たち一党が、田沼家御用達とされる米屋に押し寄せた。
天誅だ!
板戸に木館が打ち込まれ、うちこわし勢が店内に雪崩れ込んでいく。
誰だお前ら!
突然乱入してきた一団に米屋の者たちは慌てふためいた。
打ちこわし勢は構わず壁や調度を破壊し、抵抗しようとした者を取り押さえて米俵を外に担ぎ出していく。
店の者たちが
「おい!」
「やめろ!!」
と叫ぶも、米は惜しげもなく道端にばら撒かれた。

天誅だ!俺たちの苦しみを思いしれ!
新之助の声があたりに響き渡る。
たまたま店の前で見ていた男たちが
「俺たちも!」
「おう!」
と打ちこわしに加わり、その数はどんどん膨れ上がっていった。
べらぼう33話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:まるで理解していない
意次は江戸城の一角から、騒然となっている江戸の町を見下ろしていた。
少し離れたところにいる老中たちも、市中の不穏な気配を感じてそわつきはじめた。
水野は意次同様緊迫した表情をしているが、康福は
なんなのだ、これは
といまひとつピンときていない様子。
老中に加わったばかりの阿部に至っては
祭りの時期ではありませぬし
などと、目下の状況をまるで理解していない。
困窮のどん底に陥った貧しい民の苦しみと怒りを、微塵も想像できていないのだ。
そこへ、町奉行の曲淵景潮が駆け込んできた。
打ちこわしにございます!市中にて打ちこわしが起こりました!

…起こって、しまったか
意次は独りごちた。
大坂で起きた波が、幕府のお膝元である江戸まで瞬く間に到達してしまったのである。
御用部屋で曲淵が老中たちに状況を説明する。
意次は部屋の後方の末席に控えた。
どうやら始まりは深川や赤坂あたり。それを見聞きした者が我も我もとなり、みるみるうちに広がっておる様子です
襲われておるのは、米屋か
と水野が聞く。
的となっておるのは売り惜しみをした米屋
と曲淵はそこで少し口ごもり、
皆様方の御用商人も多くございますようで
我らの?
康福が日を剥いた。
辻には職なども立ち、政を改めよ、と。米欲しさだけで闇雲に押し入っておるようではなさそうです。詳しいことは、ただいま調べさせております最中にございます
意次は眉を寄せた。
この打ちこわしには大義があるということかー嫌な予感が胸をかすめる。
調べるのではなく、さっさと出向いて収めよ!
康福に怒鳴りつけられた曲淵は額に汗をかき、
職には捕らえるなら城に押し寄せる、ともありまして
と弁解した。
とたんに康福と阿部の顔が引きつる。
さらに職には、
一人でも罪に問うことがあれば何人たりとも生かしてはおかぬゆえ覚悟せよ
という凄烈な語句が連ねてあったが、小心の老中たちは卒倒してしまうかもしれないと、曲淵は口に出すのを控えた。
その時、

さすがに脅しにございましょう
と末席から意次が口を挟んだ。

恐れながら、打ちこわしが広がらぬよう、まずは町木戸を閉めさせるよう指図されてはいかがかと。そのうえで『米屋と喧嘩をした』として、召し捕られるのがよろしいかと
妙案である。
浮き足立っていた康福はあからさまにホッとして、
では、然様にはからえ
と曲淵に命じた。
曲淵が「は」と一礼して慌ただしく去る。
すると、阿部が不思議そうに言った。
しかしなにゆえ打ちこわしなど
康福はやや呆れ、
米を出せなかったからであろう
と答えて水野に向き直った。
で、米はいつ来るのだ
米は、参らぬかもしれませぬ
ではどうするのだ.....主殿!
矛先が意次に向けられた時、伝達係の役人が御用部屋に現れた。
ご無礼つかまつります!主殿頭様、ご家中より、火急の用とのことにございます!
意次が渡された文を開く。
そこには
「蔦屋重三郎から折り入って重大なる話」
と書いてあった。
べらぼう33話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:蔦重の助言
意次が急ぎ下城して屋敷に戻ると、蔦重が平伏して待っていた。

面を上げよ
蔦重が顔を上げる。その口元に切り傷、頬にはアザを作っている。

打ちこわしにでもあったのか

どうかお気になさらずで。それより、お知らせしたき事とお尋ねしたき事がございまして

知らせから聞こう

例の、石礫の男を、奉行所の前で見かけました。こたびは長屋住まいのような男のなりで、お奉行所の方が『犬を食え』と言ったと騒ぎ立て、打ちこわしの機運を煽り立てておりました。そして、あの男は源内先生の屋敷にも出入りしておりましたことを思い出しました
意次の顔色が変わる。

誰かの死に際に必ず現れる、黒い影のような冥府の案内人だ。

なにぶん昔のことなので、間違いなくと言い切ることまではできませんが

…承知した。尋ねたいこととは

あの、出るはずであった米が出なかったのはなにゆえかと

頼んだ者が米の手配に手間取っておるとのことだが。いずれにせよ、すぐに米が来るとは思わぬほうがよいやもな
まんまと意次をはめた定情は、今ごろ白河の城でのんびり黄表紙など読んでいることだろう。

素人考えなのですが、米じゃなく金は出せませんか?
差し出がましいと思いつつも、蔦重は言ってみた。

金?

ええ。米はなくとも金ならお手元にあったりはしませんか?とりあえず金を配って、その金であとから必ず決まった量の米が買えるようにするなんてすりゃ、お上もちゃんと考えてくれてるって伝わりゃしませんかと。米の工面をどうするかって話は残りますが、手配をするための時は稼げましょうし

…うまい策かもしれぬ
さほど吟味することなく、意次はうなずいた。蔦重は

よかった
と安堵のため息をつき、ハッと気づいて

いや、ようございました
と言い直す。

然様に案じてくれておったのか

こんなこと早く収まるのが一等ようございましょう

ご苦労であった。では、中身が決まり次第、追って伝える

伝える…?
なぜ俺に?
意次の言葉の意味を測りかね、蔦重は首を傾げた。

今度は金を撒くと、市中に知らせてもらわねばならぬ

それまたウチがやりますので?

あ、もう木戸も閉まっておろうし、泊まっていくがよい
意次は呆気に取られている蔦重を残し、急ぎ足で部屋を去っていった。
再び登城した意次は人気のない廊下を歩きつつ、慌ただしく水野に用事を申しつけた。
お救いが入り用な人数を数えるのでございますか?

その者らに米一升を配るためにどれだけ金がかかるか見積もりを出せ。それから、我が一党と見なされておる大名旗本を一堂に集めよ
誰も見ていないので、お互い上下関係を気にすることなく話す。
然様な者を集め、何をなさるおつもりで

我らの御用商人が打ちこわしの的になっておると言っておったではないか
......あ!

今なら皆、身を切るのではないか?
やれることをやるだけだ。
蔦重が言ったように、これ以上打ちこわしの波が広がる前に。
べらぼう33話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:李が桃の代わりに優れる
今、飯なんか炊いたら、煙で打ちこわしが来るって言ってんですよ!
じゃあずっと食わずにいろってんですか
早朝、みの吉とたかが言い争いを始めた。つよが横から
水につけときゃふやけて食えんじゃないかい?
だの
挽いて粉にすりゃそのままいけないかねぇ
だのちょいちょい案を出すが、ことごとく無視される。
ていは皆の話を聞きながらじっと考えていた。
打ちこわしも飢え死にも回避するにはどうすればよいか。
いずれにしろ、なんらかの犠牲を払わずに腹を満たすことはできない。
米俵を一つ出しておくという手はありませんか。『李代桃僵』と申しますし
つよが
り、りだ??
と日を白黒させる。
「李が桃の代わりに優れる」
という中国の兵法の言葉で、簡単に言うと、重要でない物を犠牲にして重要な物を守ることを言う。
その時、ドンドンと板戸を叩く音がした。
打ちこわしかと思いきゃ、

俺だ!私!開けて!開けとくれ!
昨日、朝早く出かけたまま帰ってこなかった蔦重である。
結局、
打ちこわしの皆様へお召し上がりください
と張り紙をして米を出すことになり、
重は皆に昨日の出来事を話して聞かせた。
新さんたちのとこ行って、打ちこわしの幟を立てて回って。そのあと田沼様んとこ行って、また摺物請け負って?
呆れ顔のつよに蔦重は、

おう。まあ、忙しくてよ
とのほほん顔で返す。
なに考えてんだいあんた! あっちにもこっちにもいい顔してどうすんだよ!
みの吉も今回はつよに同調し、
打ちこわす側からは田沼様の手先、お上からは打ちこわしの手先って言われかねねぇですよ!
と心配する。が、蔦重は

打ちこわす側から見ても恩人、お上からも恩人って言われるかもしれねぇじゃねぇか
とまあ、よくよくおめでたい。
どこまで能天気なのさ!べらぼうが!
ついにつよの癇癪玉が破裂した。

けど、どっちにも肩入れしたくなっちまったんだよ。打ちこわしたいのも分かるし、打ちこわさせたくないのも分かるし
ため息交じりの蔦重に、ていが

あの、町は今どのような様子なんです?
と尋ねてきた。

幸いここには打ちこわしは来ていないので、詳しい様子は分からぬのです

めちゃくちゃでさね。店は壊されて、道は米だらけで

道が米だらけ?

手に入れた米を懐に入れっと盗人になっから、打ちこわしてもその米を道に撒いたり、川に放り込んだりするほかねぇんですよ

それは本末転倒にございますよね。お米がないのにお米を無駄にするなど
たかが

お百姓は泣きますよ。一所懸命作ったお米を
と言いながらお櫃を運んできた。
炊き上がったばかりのご飯は、匂いを嗅いだだけで、心が安らぐ。

だろ?ってことはよ、一等いいのはできるだけ早く幕引くってことだ
田沼屋敷から帰る途中、道に撒き散らかされた米をコソコソ拾い集めている商家の小僧を見かけた。
襲われた時に怪我をしたようで、足を引きずっている。
蔦重の胸は痛んだ。これ以上、被害が広がるまえになんとかしなければ…。
そんな蔦重を見て、つよは仕方がない、というように諦めのため息をついた。
んじゃまた摺物すんですか
みの吉に聞かれて、蔦重は思案顔になる。

摺んのはいいんだけど、今度は打ちこわしの最中に配って回ることになんだよな
受け取ってもらうのは難しいかもしれませんねぇ

もうひと工夫いる気がすんだよな…
蔦重は腕組みをして考え込んだ。
べらぼう33話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:ご英断を
そんななか、江戸城に田沼派の大名・旗本が集められ、康福ら老中から米を出する旨の提案がなされた。
打ちこわし勢は我らの御用をなしておった米屋や商家を狙ってきております。このままにしておっても打ちこわされるだけ。ならば、お救い米として市中に出すほうがもはや得策なのではないかと
水野が説明するも大名たちは納得せず、にわかにざわつきだした。
すべてで、すべてでなくともよいのですが
康福が慌てて付け足すが、あちこちから
町人ごときに屈せよと言われるか!
なにゆえ暴れておる者に我らが米をやらねばならぬ!筋がおかしい!
片っ端から捕らえてしまえばよいのではないか!
と喧々買々の声があがる。
意次は部屋の最後方に控え、黙って聞いていた。
そこへ、曲淵が血相を変えて駆け込んできた。
ご無礼つかまつります!先ほど、打ちこわしによる死者が出ましてございまする!
一同に驚愕が走った。
康福が動転しつつも
それは打ちこわしをしておる者らか
と尋ねる。
打ちこわしをした者、された者、同心も
同心までもが…
場は水を打ったように静まり返った。
い、いかなことであるか!
康福は血の気が引いている。
打ちこわしの場に乗り込みました与力によりますと
曲淵が話しだした。
打ちこわしにあった米屋の前では、何十人もの飢えた人々が放り出された米を盗んでいた。
そこへ一人の貧しい身なりをした男が現れ、「持ってけ泥棒!」と強奪した金品を放り出した。
そう、かつて丈右衛門だった、あの男である。
たちまち集団が金品に群がった。
男がさらに「持ってけ持ってけ!!」と帰る。

盗みはやめてもらいたい!これは我らの思いを示すための打ちこわしだ!
打ちこわし勢を率いていた新之助が見かねて止めに入った。
誰が盗んだかなんて分かっかよ

やめてもらいたい!
二人が押し問答をしているあいだにも略奪は続いている。
その時だ。
覚悟せよ!盗人ども!
駆けつけた与力が怒鳴った。
こやつらすべて召し捕ってしまえ!
同心たちに命じるが、みな怖気づいて動く気配がない。
何をしておる!召し捕れ!
与力が苛立って配下の者を振り返った時、顔のすぐそばを石礫がかすめた。
何をする!
石を投げたのは、常に騒動を大きくしようとする例の男だ。
ふだんなら皆様方を敬いもしますが、こちらも命がけ。食えなきゃお陀仏なもんで
男の後ろには、殺気立った大勢の有象無象がいる。
男は笑いながら、役人たちを脅すように足を踏み出した。
与力と同心たちが生えたように後ずさる。
その様子に、周囲から嘲笑が起きた。
うぬら!かようなことをし、どうなると!
へえ。どうなるんです?
男が薄笑いを浮かべて合図すると、役人たち目がけて四方八方から大小の石が降り注いだ。

やめ、やめろ!おい!おい!
新之助は必死に止めようとしたが、興奮状態の民来は聞く耳を持たない。
外道が!
逆上した同心の一人が突進していき、ついに大人数の揉み合いになってしまった。
その騒動の中で同心も
曲淵の話を聞いた大名たちは、
武家が町民どもにやられたと言うのか!
片っ端から無礼討ちにしてやればよいではないか!
と屈辱で顔を真っ赤にして憤った。
しかし皆、日頃刀を抜くこともございませぬゆえ
武家が聞いて呆れるが、有能な町奉行の曲淵にも収拾できない状況なのである。

ここは先手組をお出しになってはいかがにございましょう
意次が案を出した。
先手組は軍事の心得がある。今で言えば、警察の手に負えなくなった暴動に軍隊が出動するようなものだ。
康福がさっそく
よし、上様に上申せよと曲淵に命じる。
お計らいまことありがたく!
曲淵が出ていくと、意次は安堵を浮かべている大名や旗本たちに向き直った。

しかしながら、皆様、この騒動、御先手組だけで収まりきるものではございませぬ
一同の表情が一変する。
それほど逼迫した事態とは思ってもみなかったのだ。

騒ぎを真に収められるのは米。米だけが民の怒りを収めさせる鞘にございます。そのために身を切ったとなれば、皆様の名は打ちこわしにあった者ではなく打ちこわしを収めた者として、後の世まで残りましょう。どうかご英断願いたく!どうか!
意次は深々と頭を下げた。
べらぼう33話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:天からの恵み
翌日、蔦屋は朝からてんやわんやになっていた。
みの吉はバタバタと走り回り、ていとつよ、たかは綿布で職を作っている。
蔦重は留四郎と忠五郎を助っ人に呼び、男芸者や芸人たちと鳴り物や三味線などの確認に余念がない。
蔦重が留四郎と口上の打ち合わせをしていると、板戸を叩く音に続いて

重三、俺、俺!開けて!
と次郎兵衛の声。

来たか!
自ら板戸を開けた蔦重は、次郎兵衛が連れてきた想定外の人物に目を見張った。

斎宮太夫!!

豊前太夫が風邪で喉がやられてんだって
と次郎兵衛。
すまねぇって、代わりに俺でもいいかい?

もちろんです。ありがた山にございます!
斎宮太夫は初代豊前太夫の弟子で、幼くして父を亡くした二代目を支えてきた名人である。
文旬のあろうはずがなかった。
打ちこわしは各所で発生し、今もなお続いていた。
邀化し拡大するにつれ本来の目的は失われ、新之助は焦燥感に苛まれながら、店で盗みを働く者たちを懸命に止めていた。

やめろ!これは打ちこわしだ!盗むな!盗むなって!
そこに突然、銅羅と太鼓の音が鳴り響いた。
続いて天の声のように、
天から恵みの銀が降るうううううううううううう
語りかけるような、独特の節回しの歌が流れた。
皆が「なんだなんだ」とざわつき始め、浄瑠璃好きなのだろう、その中の一人が「この声、斎宮太夫だ!」と叫んだ。
新之助たちが外に出てみると、斎宮太夫を先頭に、次郎兵衛と留四郎、男芸者や芸人たちによる隊列が賑やかに練り歩いているではないか!
三タ二分、米一升、声は天に届いたああああああああああ
斎宮太夫の歌に続いて留四郎が鳴り物をドン!と鳴らし、

『お救い銀』が出るってさぁ!
と声を張り上げた。
すかさず次郎兵衛が

米じゃなくて銀なのかい?
と合いの手を入れる。

米に引き換えられんです。ここの職にあるとおり
隊列の中央で、ていたちが作った『銀三夕二分米一升二十四日』と書かれた幟がはためいている。

三タ二分で米一升!
と次郎兵衛が強調する。
後方では、蔦重とみの吉が同じ内容の招物を撒いていた。
招物を読んだ人々の日が自ずと鎮まっていく。
これが事実なら、危険な打ちこわしなどしないで済むのだ。
鈴が鳴る鳴る太鼓が怒鳴る、腹が鳴るのはおしまいで~
と斎宮太夫は険を鳴らす。
次郎兵衛が

さぁさぁ、みなさんご一緒に!
と周囲に呼びかけ、『名主』という看板を掲げた芸人が「名主のところへ」と誘導し、皆で「行くべえ獅子いいいいいいいい」と声を揃える。
そして再びドン!と太鼓の音。

よっ!斎宮太夫!
蔦重の掛け声が呼び水となって、群から「よっ!太夫!」などと声が飛び始めた。隊列を見物している人々の顔は、いつの間にか祭り好きの江戸っ子のそれに戻っている。
新之助は、この奇跡のような瞬間を見ていた。
娯楽で腹は膨れない。だが、娯楽には人を動かす力が確かにある。

米が出る…出るのか
自分のしたことは無駄ではなかった。
べらぼう33話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:新之助との別れ
泣きそうになってふと視線を転じると、貧しい身なりの男が目に入った。
男は蔦重をじっと見つめている。
その気配に新之助は不穏なものを感じた。

行くべえ獅子いいいいいいいい
重は笑顔で摺物を配っていた。
その肩を、ふいに後ろから掴まれた。
振り返ると、あの男が刀を振りかざしている。
冥府の案内人がついに蔦重のもとに来たのだ。
避ける間もなく刃が迫殺される!!
蔦重が思わず目を閉じた瞬間、誰かが間に割り込んできた。
危険を察知した新之助だった。
蔦重もろとも道に倒れ込む。

重三!
次郎兵衛が叫ぶと同時に群索から悲鳴があがった。
近くにいたみの吉が蔦重に駆け寄り、次郎兵衛と留四郎も慌てて駆けつけてくる。

でえじねぇ。俺はでえじねぇ
新之助のおかげで怪我一つない。

これは打ちこわしだ!人を殺める場ではない!
新之助は脇腹を押さえながら男を睨みつけている。
蔦重をかばった時に刺されたようだ。
切詰まった男が再び蔦重に襲いかかろうとする。
が、突然苦悶の表情を浮かべ、どうと前のめりに倒れた。
その後ろに、血刀を手にした平蔵が立っていた。
群衆から再び悲鳴があがる。

御先手組弓頭、長谷川平蔵である!これより狼籍を働くものは容赦なく斬り捨てる!見物をしておる者は召し捕らえる!
騒然としている場に、平蔵のよく通る声が響き渡った。

かような目に遭いたい者はおるか!
平蔵に斬られた男は、すでに絶命していた。
打ちこわしに加わった者たちが蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
平蔵はフッと笑ってそれを見届け、蔦重を振り返った。

蔦重、大事ないか

へえ、俺は。新さんが
新之助は脇腹を押さえてうずくまっている。

医者に見せたほうが良いな
平蔵が配下の者たちと隊列に付き添ってくれるという。
次郎兵衛も

重三、あとは任せとけ
と言ってくれる。
二人に礼を言い、留四郎に全体のことを頼むと、蔦重抜きの一行は平蔵たちの護衛付きで再び告知に向かった。

新さん。医者に行きましょう

よい
新之助は言うが、傷はそう深くないのに、やけに息が荒い。

ちゃんと手当てしねぇとあとからまずいことに
新之助が咳き込み始めた。唇が色を失っている。刺されただけにしては様子がおかしい。

…刃に毒でも塗られておったのかもしれぬ
蔦重には考えもつかなかったが、新之助の容態を見ればあり得ないことでない。

急ぎましょう!

おふくと坊のところへ。どこかの知らぬ医者のもとで息絶えるより…
毒はすでに体じゅうに回っている。
新之助は、自分の死が近いことを悟っていた。

…合点承知の助!
蔦重はなんとか笑顔を作り、新之助に肩を貸して歩き始めた。

しかしやりましたねぇ。新さん。さすがにこれでもう米の値も下がりますよ
打ちこわしの痕も生々しい通りを歩きながら、蔦重は涙をこらえて言った。

下がるか

へえ。お上も米屋も欲張るとこうなっちまうんだって思い知りましたさ

…蔦重。俺はなんのために生まれてきたのか分からぬ男だった。貧乏侍の三男に生まれ、源内先生の門を叩いたものの、秀でた才もなく、おふくと坊のことも、守れず

なに言ってんですか。新さんは字も締麗で目のつけどこもいい、すこぶる値打ちのある人で

蔦車を守れてよかった…俺は世を明るくする男を守るために、生まれてきた…
ふいに言葉が途切れた。
新之助の重みが、蔦重の肩にガクンとのしかかる。

よしてくだせぇよ、新さん
声が震えた。無理して笑っているせいなのか泣いているせいなのか、自分でもよく分からない。

重えでさね。テメエで立ってくだせぇよ!
新之助は顔に笑みを残したまま、事切れていた。
蔦重は新之助を抱えるようにしてしばらく立ち尽くしていたが、やがて重さに耐えきれず、その場に座り込んだ。また恩を返せないまま、大事な人を逝かせてしまったー。
夕陽が沈んでいく。
蔦車の心も、打ちこわされた町と同じように粉々に壊れてしまった。
べらぼう33話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:定信の癇癪玉

打ちこわしが終わっただと?
白河小峰城の定信は、家臣の服部半蔵から報告を受けて目を剥いた。

江戸からの知らせによると、どうも田沼の一派が自らの米を差し出したと
今度こそ出し抜いてやったと思い込んでいただけに、定信の腸は煮えくり返った。

どこまで、どこまで粘りおるのだ! 足軽上がりが!
定信が癇癪玉を破裂させている頃、意次は屋敷で久しぶりにくつろいでいた。

無事、銀の引き渡しは始まりましたようにございますな
三浦の顔もほころんでいる。

手当の米も集まってきておるし、ありがたいことに裕福な商人たちによる炊き出しも始まったようでな

では、殿やご老中方の身の上は安泰にございますかな

そう願いたいところだな
二人で笑い合っているところへ植半七郎が来て、
出形守様がおいでにございます
と水野忠友の来訪を伝えてきた。
意次たちが水野の待つ別室に入っていくと、何やらただならぬ様子である。

どうした
大奥が突如、越中守様の老中登用を認めると

なにゆえ急に
分かりませぬ。しかし、とにかく老中登用は構わぬと高岳殿が
べらぼう33話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:高岳と大崎
当の高岳は、凝った細工の、色鮮やかな手袋を前に不安に苛まれていた。
この手袋は高岳がかつて意次に頼んで誂え、種姫の名で亡き家基に贈ったもの。
最後は老中首座だった松平武方のもとから持ち去られたきり行方不明になっていた、いわくつきの
「死を呼ぶ手袋」
なのである。
このようなものが私のところに送りつけられてきたのですが。高岳様、何かご存じで
何食わぬ顔で手袋を持ってきたのは、大崎だった。
手袋は親指の先の部分が不自然に変色していた。
高缶はすぐその意味に気づいた。
大崎が
あれ、ここだけ色が。調べてみましょうか
とふてぶてしく微笑む。
武元は表向き病死ということになっているが、治済の指示で大崎に毒殺されたのやもしれぬ。
大崎の手元に手袋があるのが何よりの証拠…。
身の危険を感じた高岳は、屈辱に耐えしに屈したのであった。
べらぼう33話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:不安
そんな経緯を知る由もない意次は、高岳の急な翻意を訝るばかりだ。

これはどういったことになりますので
水野が去ったあと、三浦が不安そうに聞いてくる。

御三家、一橋様、ひいては上様までを後ろ盾にした老中が生まれることになろうな。しかもそやつはとびきり俺を嫌っておる

せんだってのように、ご老中様方の力をもって止めることは

そもそも「大奥』の反対を建前に使っておったし、西の丸様は、今は上様。物事を決する力を手にしておられる
安堵したのはつかの間で、三浦は顔を無らせて黙り込んだ。
べらぼう33話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:定信と治済

忘れておったわ、城中のことなど
この先の状況が決して楽観できるものではないことを、主はひしひしと感じていた。
治済は庭に出て空を仰ぎ、晴れ晴れとした気分で思いきり深く息を吸った。
重宝していた男を失ったことと、目障りな本屋を消せなかったことは残念だが、自ら物乞いにまで扮した甲斐があったというものだ。
そこへ、治済の呼び出しに応じて定信が見参したとの知らせがあった。いつになく足早に謁見に向かう。

面を上げよ
治済は大奥から受け取った書状を定に示し、上機嫌で言った。

大奥が反対を取り下げての。月が変われば、そなたはめでたく老中じゃ

その儀、謹んでお断りしたく

は?
治済はきょとんとした。

それがしは若輩、御公儀のお役目を勤めたこともございませぬ。老中にはなれど、その内にては軽んじられ、政をなす力などございませぬかと

な、何を!今さら何を言うておる!
さしもの治済も泡を食って身を乗り出した。

首座ならば
定信は、ひたと治済を見据えて言った。

首座の老中であるならば、若輩でも徳川をお支えすることができるかもしれませぬ
なんとしたたかな。
謙虚どころか、傲慢そのものではないか。
だが好計なら負けてはいない。
治済は落ち着きを取り戻し、わざと困惑の表情を作った。

.....そなたの言い分は分かるが、それはさすがに難しかろう

なんとかなりませぬか。一橋様と御三家のお力で

あ!......いや、さすがに
むろん芝居である。

何か

あー、田安の家を上様に献じる気はあるか
今度は定信が慌てる番だ。

な、なにゆえ、然様な話になるのでございますか!

田安十万石を差し出すことは、幕府の御金蔵を大いに助けることになろう?それはそなたの抜きん出た忠義を示し、いかにも首座にふさわしい!と上様も周囲も…ならんか

自分で言っておきながらしゃあしゃあと…。
定信は歯噛みしたが、治済のほうが役者が一枚上であった。
べらぼう33話のネタバレとあらすじを吹き出しで解説:今までで一番いい顔
蔦屋でていに聞いたとおり、蔦重は墓地にいた。
土まんじゅうの前で一人、まるで仏像のように身じろぎもせず手を合わせている。
新之助が死んだことを、歌麿はていに聞いて初めて知った。

…蔦重
歌麿が声をかけると、蔦重が緩慢な動作で振り向いた。
その顔を見た歌麿は、驚きを声ごと呑み込んだ。
ずっと眠れていないのだろう、蔦重は目の下に濃いくまを作り、病気ではないかと思うほどやつれている。
歌麿はあえて気づかないふりをして、

これ、見てもらいたくてさ
と持ってきた絵を差し出した。
瞬間、どんよりしていた蔦重の日が反応したのを歌麿は見逃さなかった。

これが俺の『ならではの絵』さ
いつもの美人画や枕絵などではない。
それは虫や花など自然物を鮮やかに描き出した写生であった。
今にも蝶が花に舞い、蓮の葉の下から蛙がぴょんと飛び出してきそうな…。

…生きてるみてえだな
その絵は、とても美しかった。
半分抜け殻になっていた蔦重の心を一瞬で動かすほどにー。

うん、絵ってなぁ命を写し取るようなとこがあんだなって。…いつかは消えてく命を紙の上に残す。命を写すことが俺のできる償いなのかもしんねぇって思いだして。近頃は少し心が軽くなってきたよ

…歌、新さんが死んだ
なぜか泣けずにいた蔦重の日に、初めて涙が浮かんだ。

俺をかばって死んだんだよ。俺、ここに穴掘って埋めてさ。そしたらおふくさんと、とよ坊の骨が出てきてよ。俺やこの人たちを製穴掘って叩き込んだんだって
そもそも女郎のうつせみと新之助を出会わせてしまったのも自分だ。
こんな因果を作ってしまった自分を呪って呪って呪い尽くしたが、新之助もふくも、とよ坊も生き返りはしない。

新さんって、どんな顔して死んだ?
歌麿が唐突に聞いてきた。

いい顔しちゃいなかった?
蔦重の脳裏に、新之助の死に顔が浮かぶ。
そこに恨みや後悔は微塵もなかった。
志をやり切った、満ち足りた人間の顔だった。

俺はさ、いい人生だったと思うんだよ、新さん。さらいてえほど惚れた女がいて、その女と一緒になって。苦労もあったろうけど、きっと楽しい時も山ほどあって。最後は世に向かって、テメエの思いをぶつけて貫いて。だから、とびきりいい顔しちゃいなかったかい?

いい顔だった…
涙に震える声で、蔦重は言った。

今までいっちいい、いい顔、男前で.......。おめぇに…おめえに写してもらいたかった!
とめどなく涙がこぼれ、蔦重は子どものように泣きじゃくった。
梅雨の走りか、静かな墓場に湿った黒南風が吹き抜ける。
涙が涸れるまで泣けばいい
歌麿は、泣き続ける蔦重の傍らにそっと停んでいた。
べらぼう次回放送
次回のべらぼうネタバレ第34話はこちら

べらぼうのネタバレとあらすじ:一覧
2025年8月

【べらぼう 8月】あらすじ一覧
第29話 8/3(日) 江戸生蔦屋仇討
第30話 8/10 (日) 人まね歌麿
第31話 8/17(日) 我が名は天
第32話 8/24(日) 新之助の義
第33話 8/31(日)打壊演太女功徳
2025年9月

【べらぼう 9月】あらすじ一覧
第34話 9/7(日) ありがた山とかたじけ茄子
第35話 9/14(日)間違凧文武二道
第36話 9/21(日) 鸚鵡のけりは鴨
第37話
べらぼう33話:筆者の見解

放送後に記載いたします~!
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