江戸時代には、多くの庶民が読書を楽しむようになり、さまざまなジャンルの書物が生まれました。

大河ドラマ「べらぼう」のなかでも、蔦重たちが
黄表紙とかいろいろ言っているシーンがありんすね!
その中でも特に有名なのが
「洒落本(しゃれぼん)」
「黄表紙(きびょうし)」
「人情本(にんじょうぼん)」
です。

でも、これらの本の違いって何?
分かりにくい…
こちらの記事では、それぞれの特徴や内容の違いを分かりやすく解説します!
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【洒落本とは】遊郭文化を風刺した大人の読み物

概要
洒落本は、江戸の遊郭文化を題材にした風俗小説です。
- 成立時期:18世紀後半(江戸中期)
- 主な読者層:武士や町人の知識人層
- テーマ:遊郭での遊び方や風俗の風刺
- 代表的な作者:山東京伝(さんとう きょうでん)
- 代表作:「通言総籬(つうげんそうまがき)」
特徴
遊女との遊び方や当時の色恋事情がユーモラスに描かれています。
ただし、単なるガイドブックではなく、風刺や教訓も含まれており、大人向けの娯楽作品として人気を博しました。
洒落本は遊里での遊びを描いた会話形式の読み物で、「うがち」といわれる人情の機微に面白みがありました。
山東京伝が第一人者で、蔦屋から「通言総籬」や「仕懸文庫」「青楼昼之世界錦之裏」「娼妓籭」の3部作などを出版しました。
そしてこれが大当たり!
しかし、この3部作が出版統制令にふれ、山東京伝は手鎖50日に処されてしまったのです。

せっかくヒットしたのにひどい話…
そんなこんなで、やがて洒落本は衰退していってしまったのです。
【黄表紙とは】漫画の原点

概要
黄表紙は、絵と文章がセットになった読み物で、現代で言う「漫画」に近い存在でした。
- 成立時期:18世紀後半(江戸中期)
- 主な読者層:子供から大人まで幅広い層
- テーマ:風刺やユーモア、冒険物語
- 代表的な作者:恋川春町(こいかわ はるまち)、山東京伝
- 代表作:「金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)」
特徴
最初は子供向けの絵本として発展しましたが、徐々に社会風刺やパロディが増え、大人の読み物としても人気を集めるようになりました。
特に、恋川春町の「金々先生栄花夢」は、江戸の庶民が武士の堕落を風刺する内容で、幕府から厳しく取り締まられました。
こうした社会批判の要素が強まったことで、黄表紙も幕府の規制を受けることになりました。

実はこの黄表紙、漫画の原点ともいわれているのです!
黄表紙は漫画の原点
現代にも通じるマンガ日本が世界に誇る文化として、漫画があります。
実は「鳥獣戯画」をはじめとした黄表紙は、この漫画の原点となったとされているのです。

確かに、漫画は絵と文字を使った表現方法ですね
漫画のように静止画と文字が描く物語性のある紙媒体は、絵巻物が最初だとされていますが、動きを表現するために描かれる効果線らしきものも12世紀には登場しています。
そのため、本としての漫画の起源は黄表紙といわれているのです。
登場人物をデフォルメした表現だったり、吹き出しでの会話文は、まさに漫画そのもの!

セリフも口語体で、まさしく現在の漫画に通じるものがありんすね
【人情本とは】人間ドラマに焦点を当てた恋愛小説

概要
人情本は、江戸時代後期に流行した恋愛小説で、町人たちの日常や恋愛模様を描いた作品です。
- 成立時期:19世紀前半(江戸後期)
- 主な読者層:町人層(特に女性)
- テーマ:恋愛や家族愛、義理人情
- 代表的な作者:為永春水(ためなが しゅんすい)
- 代表作:「春色梅児誉美(しゅんしょくうめごよみ)」
特徴
人々の感情や人間ドラマに重点が置かれ、現代の恋愛小説の原型とも言える存在です。
特に、為永春水の「春色梅児誉美」は、庶民の恋愛をリアルに描いたことで爆発的な人気を誇りました。
しかし、「風紀を乱す」として幕府から取り締まりを受け、為永春水は投獄されてしまいました。

江戸時代ってのは、人気が出るとすぐに取り締まられちゃうんだからねぇ
洒落本・黄表紙・人情本の違いまとめ
3種の書物や、江戸時代に活躍したそれ以外の書物の違いをまとめると以下の通りとなります!
江戸時代の主な草双紙・読本の種類と特徴
名称 | 本の内容 | 作品例 |
---|---|---|
赤本 | 朱や紅の表紙。桃太郎・さるかに合戦など子ども向けの昔話や童話が中心 | 西村重信画「桃太郎昔話」 |
黒本 | 黒い表紙。歌舞伎や人形浄瑠璃といった芝居や、軍記ものなどのあらすじを材料にした内容 | 烏居清满画「恋塚物語」 |
青本 | 黄色(緑色)の表紙。内容は黒本と似ているが、やがて恋愛や色恋などに特化していった | 富川吟雪画「風流仙人花聟」 |
黄表紙 | 黄色い表紙。大人向けにした草双紙で、物語性が高く、風刺をきかせた小説が多い | 恋川春町「金々先生栄花夢」 |
台巻(だいかん) | 短編である黄表紙を、数冊まとめて長編として販売。伝奇作品が多くなる | 柳亭種彦「偐紫田舎源氏」 |
洒落本 | 会話を基調にした内容で、江戸の遊郭文化を舞台に男女の関係を細やかに描いた | 山東京伝「仕懸文庫」 |
人情本 | 洒落本を長編化したもの。男女や家庭の人情と葛藤を描き、「泣本」といわれた | 為永春水「春色梅児美」 |
談義本 | 町人文化をモチーフに、おかしみのなかに教訓をもりこむ。滑稽本へと発展した | 平賀源内「風流志道軒伝」 |
滑稽本 | 談義本から派生。庶民の日常生活に根づき、会話による滑稽さを売りにした娯楽小説 | 十返舎一九「東海道中膝栗毛」 |
読本 | 草双紙よりページ数が多く、歴史を題材に勧善懲悪や因果応報を描く | 曲亭馬琴「南総里見八犬伝」 |
まとめ:江戸時代の出版文化を知ると面白い!
洒落本・黄表紙・人情本は、それぞれ異なるテーマを持ちながらも、庶民の文化や社会の変化を映し出す重要な文学作品でした。
特に幕府による規制が影響し、流行の移り変わりがあったことも特徴的です。
現代の漫画や小説にも通じる要素が多く、江戸時代の庶民がどのような娯楽を楽しんでいたのかを知ると、より深く日本の文化を理解できるでしょう!

日本では江戸時代から漫画が親しまれていた、とも言えそうです!
【べらぼう全話】ネタバレとあらすじを吹き出しで解説!初回から最終回までまとめ
